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TOKYOダンジョン  作者: 佐世 保
プロローグ
1/29

4月1日 なんでこんなことに

初投稿です。

遅筆のため不定期更新です。

  番匠ばんしょう 和人かずとは荒い息を整えながら、残弾数を確認した。自動小銃の予備マガジンは残り1本。上官の物だった自動拳銃は予備弾倉が1本。それが尽きれば、あとはナイフだけが武器になる。


「くそっ、なんでこんなことに!」


  中隊は向島付近で散り散りになっしまった。小隊長は1時間前に言問橋の戦闘で死んだ。それから生存者を探しながら歩いたが、見つかるのは遺体ばかりだった。


  生存者を探すのを諦め、ブリーフィングで確認した地図を思い出しながら、最短と思われるルートを逃げた。


倒れていく仲間たちが残した弾薬を回収しながら戦闘を続け、浅草駅を過ぎたところで、ついに独りになってしまった。

エリアから脱出するために移動する距離は、おそらく直線距離で3km。普通なら歩いても20分程度だが、それが今は恐ろしく遠く思えた。


「クソッタレ、生きて還れたら殺してやる!」


  危険があることは判っていたはずだ。

  テロの可能性もあったため、投入されたSATが全員未帰還になっていた。何かしらの脅威があり、彼らの武器であるサブマシンガン程度では対抗できなかったことは、容易に推察できるはずだ。ところが火器の携行にマスコミ、市民団体、政治家を中心に反対の声が上がった。


  小隊支援火器やグレネード、ヘリの支援などがあれば、もう少しましな戦いができたはずだ。いつものことだが「災害派遣に武器は必要ないはずだ。国民に銃を向けるのか?」と反対された。


  自衛隊上層部の粘り強い交渉で、ようやく小火器の携行だけが認められた。しかし、携行する弾薬に制限がかけられた。連隊長が処罰覚悟の命令無視を決行し、携行弾薬を増やさなければ、和人がここまで逃げることはできなかったであろう。


  動くものを右の視界の端に捉えた。

  和人は素早く銃を構え、そちらを向いた。仲間たちを殺して喰った化け物たちを確認する。弾は節約したい。三点バーストで発砲する。

  斧のような武器を 持つ化け物が仰け反る。撃ち終わったら即移動を開始する。


  化け物は数が多い。当たれば5.56mm弾一発で倒せるが、囲まれて同時に襲われると殺られる。化け物は死を恐れていないようだった。仲間が殺されても狂ったように襲いかかって来た。

しかも後から後から湧いて出てくる。やがては数で押し切られる。隊員の多くが、それで殺られた。包囲されるのだけは絶対に避けなければならない。それがこの数時間で和人が学んだことだ。


  ビルの谷間や、道路に放置された車の陰を利用し慎重に国道6号線を南下をする。作戦前のブリーフィングの記憶によれば、墨田区を中心とする被災地域は、神田岩本町辺りで外に出られる。国道6号線を南下し神田川から西に向かう、それが最短ルートのはずだ。


 その後、敵に遭遇すること無く浅草橋までやって来た。言問橋での遭遇戦以降は化け物の出現が、明らかに減っていた。

隅田川の向こう、墨田区とは明らかに違う。エリアの外縁部ほど化け物は少なく、中心部に行くほど多いのではないか。

  緊張の連続の中で、そんな事を考えた和人に油断が生じたのは無理もないことだった。


「しまった!」


  行手のビル、放置車両等の陰から現れた化け物に気付くのが遅れた。後方を振り返れば、そこにも化け物がいる。

包囲されていることに気付いた和人は唇を咬んだ。呆然としたのは刹那で、すぐさま周辺状況を確認する。

最も包囲の薄そうなポイントにフルオートで銃弾をばらまいた。化け物たちがバタバタと倒れた。化け物たちの死体を跳び越え、空になったマガジンを交換しながらビルの谷間に駆け込んだ。


 しかし、そこには今までに遭遇したものとは異なる化け物がいた。


  ここまで遭遇したのは一種類のみ。小学生位の体格で、緑がかった皮膚を持つ人型の化け物。

しかし、路地の奥にいる化け物は、身長180cmの和人より頭二つ分ほど大きい。まるで二足歩行する猪のように思えた。

  たたらを踏んで和人は立ち止まった。

  和人を視認して突っ込んでくる猪の化け物、その手には棍棒が握られ、和人に向かって振り降ろされた。

  とっさに小銃を頭上に掲げてガードするが、重すぎる一撃は、和人を路上に這わせ、小銃は折れ曲がり弾け飛んだ。振り仰げば猪が棍棒を振り上げるのが見えた。


(殺られる!)


 立ち上がることもできず、猪を見上げる。

 しかし棍棒が振り降ろされたるより早く、猪の後頭部に爆炎が生じた。


「こっちだ!豚野郎!」


 その声は女性のものだった。

 猪は咆哮を上げてふりかえる。

 和人も声の主を見つけた。


 まだ幼さの残る、中学生くらいの可愛らしい女の子が、腰に手をあて、仁王立ちしていた。

それだけでも違和感が有りすぎるのに、その服装はアニメのキャラクターのようなピンク色の派手なもので、ツインテールの髪は金髪だった。


「なんだ、それ?」


 あまりにも場違いな少女の登場に、思わず和人は呟いた。その和人の袖を誰かが引っ張った。


「お兄さん、こっち、こっち~」


 和人の袖を引くのは、コスプレ少女と同じ年頃の、これまた可愛らしい少女。こちらは迷彩柄の戦闘服姿をしている。

タイガーストライプと呼ばれる古いタイプの迷彩柄だ。明らかにダブダブでサイズが大き過ぎる。しかも頭にかぶっている緑の十字マークが入った黄色い安全ヘルメットが、がっかり感を強調していた。


「お兄さん、今のうちに逃げるよ~」


 迷彩服の少女は雑居ビルの入口の方へ和人を引っ張って行こうとする。だが、和人は躊躇ためらった。コスプレ少女を置いて逃げる訳にはいかない。国民の生命を守るのが彼の仕事だから。


「大丈夫~、カオルのカイティングは成功率100%」

 迷彩服少女は和人の迷いを察したのか、しっかりと頷いて見せた。


「カイティング?」

「ん~、囮になること~?そんなの後でいいから、行くよ~!」


 なんとも言えない間延びしたしゃべり方をする戦闘服少女は和人を雑居ビルの中へ引っ張って行く。


「待てよ、こんなビルの中に入ったら逃げ場がねえ。追い詰められたら…」

「大丈夫だよ~。退路は確保してある、んなもん常識でしょ~」


 ビルに入るのを躊躇う和人に、戦闘服少女は色気の無いウインクをして見せた。

 階段を上り、三階に入るとエステ店に入った。


「なんでエステ店?」

「頼まれたからね~。これでいいよね~」


 戦闘服少女は、陳列してある美容ローションを背負っていたバックパックに、片っ端から詰め込んだ。


「おい、それ泥棒…」

「じゃ、行くよ~」


 和人がとがめるのを、あっさり無視して、そのままさらに店の奥に入って行く。最奥の壁にトンネルがあった。


「なんだ、これ?」


 和人の疑問に答えること無く、戦闘服少女はトンネルの中に入って行く。


「早く来ないと置いてくよ~」


 訳が解らないまま、慌てて少女の後に付いていく。トンネルは直径1メートル長さ3メートルほどで、どうやら隣のビルにつながっているようだった。

戦闘服少女は和人がトンネルを抜けるまで待っていた。そして和人がトンネルから這い出てくると今しがた通り抜けたトンネルに両の掌を向ける。


 次の瞬間和人の顎が落ちそうになった。

 壁に波紋のような揺らぎが生じ、今まであったトンネルが消え、何事も無かったかのように、オフホワイトの壁がそこにあった。


「なんだ、それ?お前、今何をした!?」

「次、行ってみよ~」

「は?おい、こら、待てって!」


 戦闘服少女は和人の問いには答えず、さっさと歩いて行く。和人は慌てて少女に付いていった。


 七つのトンネルを抜けた、その先にコスプレ少女が待っていた。ここも雑居ビルの一室、何故か居酒屋だった。

 コスプレ少女の無事な姿を見て、和人は胸を撫で下ろした。


「良かった、無事だったか」

「カオル~、連れて来た~」

「アユアユ、ご苦労さま」


 コスプレ少女に戦闘服少女が駆け寄って抱き付いた。コスプレ少女は戦闘服少女の安全ヘルメットを外し、クセ毛の多いショートヘアを撫でる。

 なんとなく微笑ましい状況に苦笑しながら、和人も二人に近づいた。二人の視線が和人に向けられる。和人は二人に敬礼をした。


「助けてくれてありがとう。自分は陸上自衛隊第一師団第一普通科連隊の番匠 和人です」

「これはこれはご丁寧に。私はプリンセス…」

「この痛い人は橘薫たちばなかおる、ボクは水越歩弥みずこしあゆみ

「あーっ!アユアユってば、ひっどーい!」

「………」


 何らかのポーズを取ろうとしていたカオルを無視してアユミが自己紹介した。ポージングを強制終了シャットダウンさせられたカオルがむくれる。和人は少女たちのやり取りに、自分が今何処に居るかを忘れてしまいそうになった。


「カオル~、陸自さんが呆れてるよ~」

「あらやだ」


 カオルが恥ずかしそうに身をくねらせる。

 和人は咳払いをひとつ入れて気を取り直した。


「ゴホン、あー橘さんと水越さんだね。早速で悪いけど、いくつか質問をしたいけど、いいかな?」

「はい、構いませんよ。なんでしょう」

「うん、まず水越さんがやっていたアレは何?」

「アユでいいよ~。アレって何かな?」

「ほら、トンネルというか、通路というか……」

「魔法だよ~、土魔法」

「は?……」


 和人は耳を疑った。

 今、この少女は何を言った?


「あー、信じらんないですよね。でも、ホントなんです。ダンジョン化しちゃった後に何故か使えるようになったんですよね。まあ、普通は呪文詠唱とか魔法陣が必要だったりする訳で、無詠唱は高等技術というのが定番なんですよ。私ら魔法の修行とかしたことないのに、これってちょっとチートですよね?でも、チートってんなら使ってみようってのが人情でしょ?カオル無双とか、カオルTUEEEとか……」


 カオルがアユの発言を補足説明しようとしているのは和人にも理解できた。ただし、理解できたのは最初のほうだけで、斜め上に暴走しだした説明は、より一層和人を混乱させた。


「ち、ちょっと待って!」

「カオル~、その説明は人としてどうかと思う~」

「何故人格否定!?」

「じゃあ、私が説明しましょう」

「あれ、もう一人いたんだ」


 居酒屋の厨房から現れたのは、やっぱり美少女だった。





ご意見、ご感想、大歓迎です。


よろしくお願いいたします。


矛盾点の改稿しました。

( ̄▽ ̄;)

主に地理関係です。


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