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小説講座  作者:
6/59

1、文章作法 【描写とは?】


小説に関わっていると、良く耳にする言葉があります。


それが「描写」。


描写とは何でしょう?


辞書で調べれば、「物の形や状態、心に感じたことなどを、言葉や絵画、音楽などによって写しあらわすこと」といった説明が出てくるかと思います。


小説は文章で紡ぐ物語。

物の形や状態、心に感じたことは全て文章で言い表さなければなりません。


これがまた難しいのです。

感じたままに情景や心理を書けば描写になるかと言えば、そうではないのです。


わかりやすく言うと、本作で執筆している文章は描写ではありません。

情景も心理も描写していませんから。

文章を着飾らせることなく、伝えたいことに専念したこういった文章は『説明文』に値します。


もちろん、小説内においても説明が必要な場面は多く出てきますので、説明文の書き方も重要度は高めです。

しかし、日常生活において何かを人に説明するという機会は頻繁にありますので、説明がまったく出来ないという人はあまりいません。


それでもコツが知りたいというのであれば、「説明したい事柄を分解して、順序立てること」と簡単ながらアドバイスします。

需要があれば、こちらも深く取り上げますが今は描写について。


例えば、小説内のワンシーンで桜並木を歩く情景を描く必要があるとします。


情景を「説明」するのであれば、桜の木が連なった遊歩道を歩いていることが伝わりさえすれば問題ありません。

ですが、小説ですので『その情景ですら鮮やかに描いて読者を引き込む要素の一つ』としなければなりません。


そうする為には、ただ説明するだけでは事足りません。

そこで描写。


何が違うの?という人が多いですが、まるで違います。


そこに何があるかを拾い上げることが説明で、さらに様々な情報を乗せてあげると描写になります。




この、『様々な情報』が描写の最大のコツであり、描写の存在意義になります。




先程の桜の木が連なった遊歩道という説明文を描写してみましょう。


【例】

咲き誇る花びらを風に揺らす桜並木。

眩しげに眼を細め、穏やかな表情でゆったりと歩く貴方の姿に、私はただただ見惚れていた。



上記はただ文章を修飾しただけではありません。

二つの文に、様々な情報を詰めました。


1、桜が満開であること

2、季節感

3、時間の流れ(体感的に)が緩やかであること

4、貴方の心理状態として多幸感

5、私の気持ち・想い

5、シーンとして緊張感を排除した「緩和」の状態

※緊張と緩和に関しては、別の項目を設けます。


いかがでしょうか。

ただ桜並木を歩かせるより、情景は目に浮かんできませんか?

その理由は、上記のような情報が文章に詰まっているからです。


※余談+後々の伏線として補足※

本来であれば、色合いも描写に入れたいところでしたが、桜の花びらの色と言えば「桜色」が何よりもベストマッチな単語です。

しかし、ワンセンテンスに『桜』の単語を多用するのはくどいので避けました。

また、桃色やピンク色といった表現方法も出来ますが、桜花の色に対して桃色と表現するのはあまりにもピント外れですよね。

そして、日本を象徴する花でもある桜を表現する文章にあって、英語であり、カタカナ表記を必要とするピンクは、風情がありません。

なので、色を文章に組み込まずに桜花という言葉から色合いをイメージしていただく手法を取った形になります。


さらに、季節感を表す表現として最適な、春風という単語をあえて使いませんでした。

辞書でも「春の穏やかな風」と載っていますが、実は気象的に春は意外と風が強めなのです。

人によっては、春風に強めの風をイメージする方もいます。

穏やかさを優先的に表現する為、避けた次第です。

そもそも「桜」が春の季語なので、季節感を前面に出す文章を作らずとも、表現できるというのも理由にありました。

※余談+後々の伏線として補足※


さて、これだけの情報と意味を二つの文章に持たせることが出来ます。

なぜそこまでしなければならないかと言えば、読者がイメージしやすいように文章を書くのが作者の仕事だからです。


これが描写となります。


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