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小説講座  作者:
42/59

1、文章作法 【指示語】

今回は指示語です。


国語の領域ですが、中学で習う程度のものなので身構える必要はありません。

小説でも文章作法として使える要素ですので講座とします。


指示語ってのは、固有名詞を使わずにそのモノを指し示す際に使う言葉です。


「これ」「あれ」ってのがそれ(指示語)。


上記の「それ」って部分もそうなんだけど、そこには指示語って単語が本来は当てはまるべきですよね。

文脈指示っていう使い方です。


指示語って名詞を使わずに、前文を引っ張って指し示して表したわけです。


文の中で何かしらを指し示すのが文脈指示。


そして、実際に目の前にあるものだったり、あるいはお互いに名前を出さずとも指示語で通じるものを指し示す場合に使うのが、現場指示。


ちょっとそれ取って、とか。

倉庫にあれあるから取ってきて、とか。


日常会話でも何気なく使っているでしょう。


指示語って言うとわかりづらいけど、「こそあど言葉」って言うと聞いたことあるかもしれません。


さっきから使ってる「これ」「それ」「あれ」「どれ」です。

指示語を体系化したものがこそあど言葉。


これを基準にして様々なものを指し示すわけだけど、日本語ってのは使われ方によって変化しますよね。


その変化の仕方ってのを、Wikipediaから引っ張ってきます。





   事物 場所  方向  人称


コ系 これ ここ こちら こいつ


ソ系 それ そこ そちら そちら


ア系 あれ あそこ あちら あいつ


ド系 どれ どこ どちら どいつ




  連体詞  副詞  形容動詞


コ系 この   こう   こんな


ソ系 その   そう   そんな


ア系 あの   ああ   あんな


ド系 どの   どう   どんな





使われる目的によって「こそあど言葉」も変化していくわけです。


続いて。


こそあど言葉はそれぞれで距離感まで示してくれます。(現場指示においてのみ)


コ系→近称

「これは○○です」


ソ系→中称

「それは○○ですか?」


ア系→遠称

「あれは○○ですか?」


ド系→不定称

「どれを選びますか?」


さて、指示語については理解していただけたと思います。

これを小説だとどう使うかが問題ですよね。


まずは例をあげます。



【例文】

私は彼に言った。

「例のあれがそこの部屋の中央ら辺にあるから、アイツにいつものようにやっておいてって伝えてね」



いかがですか?意味伝わりましたか?

100%の確率で伝わらなかったはずです。


この例文は極端に指示語を使って、逆に個人名や行動を伏せた文章だから、伝わらなくて当然です。


しかし、お互い馴れ親しんだ者同士、言葉にしなくても通じる間柄ならば、伝わる日常会話ではあるのです。


小説においては、前置き(文脈指示用法)として《あれ》が斧で《アイツ》が殺人鬼だと読者に予め伝えておくことも出来ますが、それでもやはり曖昧な表現であることには違いないでしょう。


簡単に言えば、指示語ってのは意味的には略語に近いです。


言葉を短縮するのが略語、指示語は物や場所などを指し示した言葉で、つまりは文章や会話を短縮しますからね。

場面の状況や人間心理を分かりやすく正確に伝えなければならない小説で多用してしまうと、文章全体にもやがかかったようになってしまう危険性があるわけです。


現場指示だろうと、文章指示だろうと、なるべくは使わないほうが良いでしょう。

しかし、使わないほうが良い指示語ではありますが、使い方によっては効果的な場合もあります。


それは強調したい場合です。


【例文】

ソレに近寄ることは死を意味する。

よって、ソレは死の象徴。

死のカタチ。



上記のように強調して書くことで、『口にするのも(ハバカ)れる…』というような雰囲気を醸し出すことが出来ます。


その名称すらも口にしたくない、と表現するには指示語は最適かもしれません。


指示語についてはこんなとこですかね。

日常語と小説の文章は違いますから、何気なく普段使う指示語は小説には組み込まないようにしましょう。


使うなら、意図を持って文章構成の一部とすること。

小説的技法ってほどのものではないですが、知ってると上手く役立てることも出来ます。


ご活用ください。

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