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青々と生い茂る木々が風に吹かれて何かを呟いている。
山々を背にすると目の前に広がるのは水平線。
山を映したようなエメラルドグリーンの海は、足が届かないほど深いというのに底まで見える。
ほぼ9割を山が占めているほど自然豊かで、人々は海岸沿いに山を削りそこに家を作って生活している。
ここはとある島の離れ小島。少し離れたところに本島がある。
本島までは船ですぐに渡ることができるが、泳いで渡るには少し遠く、本島との間には鱶がいることもあるため、泳いで渡る者は誰もいない。
しかしこの離れ小島の沿岸には船が一つもなく、本国からやってくる渡し船以外に移動手段はない。そう、この小島は外部への移動手段を一つも持たない孤島なのだ。
そんな孤島でも、住んでいる人はいる。正確にはここでしか生活ができない人々がいる。