いちごみるく
適当に思いついたテーマで書きました。
テーマ:いちごみるく
よろしくお願いします。
さくさくしてる。それは、この下に広がる感触のことじゃない。
どちらかというと、しっとりしてるのかもしれない。今までに味わったことのない感触だから、わからない。
「おいしいね」
「そうね」
雲みたいにふんわり優しくて、どこか冷たい。それはこの冷気溢れる外気の中で立ち尽くしているから、ということはあるのだろうが、背筋に感じる細い冷や汗は、きっとそれだけが理由じゃない。
ねばつく甘い液が唾液と混ざり合って、水分を欲した喉の奥につるつると流れていく。
横でもぐもぐと飴を噛む和子を見る。和子はまっすぐに前を向いて、鉄橋から見渡せるこの崎谷町を眺めていた。
はぁ、と息を吐き出す。白いもわもわになってきえていくそれを見送り、その流れで曇った空を見上げる。
「ん」
小突かれて和子を見る。すると、こちらに白地に赤い包装の、小さい三角形の飴を差し出した。まんまるくてくりくりした、いかにも男子受けしそうな瞳が少し色を失くす。
「いらない」
「そう?」
最後のいっこなのに、いいの、と少し口を尖らせる。それにも頑なに首を振る、少し小さく。
じゃあ、と小さな口を開き、飴を放り込む。それを見て思わず生唾をごくりを飲み込み、中で動き廻る舌を目で追ってしまう。なんだか胃の底がむずむずして、気持ち悪い。危なっかしくて、盃の淵からこぼれてしまいそう。
「寒いね」
何を言おうか唐突に惑ってしまって、お互いを気にし合う男女みたいな発言をする。言ってから、はっと気づく。
「……っ」
「そりゃあ、冬だからね。東北の冬は冷え込むし」
何でもないような返事。
雪で濡れしみたせいか、悴むような鋭さが足の裏から伝わってくる。わたしはコートのポケットに手を突っ込んだまま、その指でさわさわと生地をいじくりまわしていた。