表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編

いちごみるく

作者:


 適当に思いついたテーマで書きました。


 テーマ:いちごみるく


 よろしくお願いします。

 さくさくしてる。それは、この下に広がる感触のことじゃない。

 どちらかというと、しっとりしてるのかもしれない。今までに味わったことのない感触だから、わからない。

「おいしいね」

「そうね」

 雲みたいにふんわり優しくて、どこか冷たい。それはこの冷気溢れる外気の中で立ち尽くしているから、ということはあるのだろうが、背筋に感じる細い冷や汗は、きっとそれだけが理由じゃない。

 ねばつく甘い液が唾液と混ざり合って、水分を欲した喉の奥につるつると流れていく。

 横でもぐもぐと飴を噛む和子を見る。和子はまっすぐに前を向いて、鉄橋から見渡せるこの崎谷町を眺めていた。

 はぁ、と息を吐き出す。白いもわもわになってきえていくそれを見送り、その流れで曇った空を見上げる。

「ん」

 小突かれて和子を見る。すると、こちらに白地に赤い包装の、小さい三角形の飴を差し出した。まんまるくてくりくりした、いかにも男子受けしそうな瞳が少し色を失くす。

「いらない」

「そう?」

 最後のいっこなのに、いいの、と少し口を尖らせる。それにも頑なに首を振る、少し小さく。

 じゃあ、と小さな口を開き、飴を放り込む。それを見て思わず生唾をごくりを飲み込み、中で動き廻る舌を目で追ってしまう。なんだか胃の底がむずむずして、気持ち悪い。危なっかしくて、盃の淵からこぼれてしまいそう。

「寒いね」

 何を言おうか唐突に惑ってしまって、お互いを気にし合う男女みたいな発言をする。言ってから、はっと気づく。

「……っ」

「そりゃあ、冬だからね。東北の冬は冷え込むし」

 何でもないような返事。

 雪で濡れしみたせいか、悴むような鋭さが足の裏から伝わってくる。わたしはコートのポケットに手を突っ込んだまま、その指でさわさわと生地をいじくりまわしていた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ