番外編 よろしく!〜21歳の紬(後)
「え?」
よろけて悠太の方に倒れ掛かる。
私の体を、悠太の腕が優しく包み込む。
え?なになに?なんで?
びっくりして固まってしまった。
腕の中で、私の顔は悠太の胸に押し付けられていた。
悠太の鼓動が私の頭に響く。全身が心臓になったみたいに揺れる。
「..紬、4年間ずっと紬のことを思っていた」
待って?!
なにこの状況?
私の体どうなってる?
急に目の前が滲んできた。
「ひっ、ううっ」
思わず泣き声が出た。
子供みたいに泣きじゃくる私を見て、悠太が私の体から離れた。
「ごめん、怖がらせちゃったな」
違う、違うの。
私は涙が止まらず声が出なかった。
涙でグチャグチャの顔。
しゃくりあげながら、やっと声が出るようになった。
「私、ずっと後悔してた。4年前のこの公園で悠太にちゃんと向き合えなかった事」
悠太はびっくりした顔で私を見ていた。
「私、ずっと思ってた。もう一度悠太に会って、ちゃんと言わなきゃって、ありがとうて、また会おうねって」
最後は言葉にならなかった。悠太が再び私を包み込む。
優しくて、暖かくて。
ふと見上げると悠太の目があった。
思わず目を瞑る。
その時、
唇に何かが触れた。
柔らかくて、あたたかい何か。
えっ?!
なになに?
私、今チューされた?!
えーっ!?
恥ずかしさで自分でも顔が赤くなっているのがわかる。
目が開けられない。
もう一度触れた。
今度はさっきよりもゆっくり。
柔らかくて優しい。
恥ずかしい!顔が爆発しそう!
私は下を向いたまま、顔をあげられなかった。
あたまぐるぐる、目が回るみたい。
悠太は私の両肩を掴んで、ゆっくりと腕の力を緩めた。
悠太と私の体に空間ができた。
寂しい。
心のなかに浮かんだ感情。
いままでに考えたことも、感じたこともなかった感情。
もっと悠太の腕の中に居たい。
自分が自分じゃないみたい。
顔を上げると、悠太の真っ直ぐな目が、私に飛び込んできた。
慌てて下を向いた。
「えっと、あの、悠太、その、ありがと」
なんだ、「ありがと」って??
何か言わなきゃ、もう逃げないって決めたのに。
「えっとね、悠太。その..」
なんて言えばいい?こういうとき、何て言うんだっけ?
「えっと、これからもよろしく」
私は下を向いたまま、右手を差し出した。
悠太はその手をそっと握った。
「こちらこそ、よろしく!紬」
<よろしく! 完>




