9−14 エピローグ・切れないコード(後)
七香は、いつもの能天気な様子はなく、じっと私の目を見て言った。
「わかんない......うん、でも…」
私はその時、自分の中のバラバラだったパズルのピースが、ひとつひとつ繋がっていく感覚を覚えた。
映像がフラッシュバックする。
後輩の為に、真剣に怒る悠太。
叔母さんに優しく寄り添う悠太。
あの時の胸の苦しさ。
心臓の鼓動。
悠太の声が心に響いた、あの夜。
そうか、そうだったんだ。
ちょっと考えればわかることだった。
答えは一つしかない。
パパが、私が、さんざん口にしてきた心の暗号。
「七香、私..私の..」
私の心の暗号、自分自身の気持ち。
いままで、セキュリティは人の心って言って来たのに、自分の心が見えてなかった。
あの時、ちゃんと悠太の顔も見ずにバイバイしちゃってた。
悠太はまっすぐ私のことを見てくれていたのに。
ちゃんと最後の言葉、聞いてなかった。
ちゃんと聞けばよかった。
ちゃんと言えばよかった。
悠太、向こうに言っても忘れないでねって、また会おうねって、ありがとうって。
取り返しのつかないことをしちゃった。
会いたい。
会ってちゃんと伝えたい。
続きが言葉にならない。
私の目から涙が溢れて、止まらない。
その場で立ち尽くし、顔を覆っていた。
七香は、何も言わずに、そっと私のそばに体をくっつけて肩を抱きしめた。
「大丈夫。別れは、終わりじゃないよ。きっと、また会える。絆のコードは、切れたりしないんだから」
「七香、それ私がよく言っているパパのセリフ」
思わずクスッと笑ってしまった。涙でグチャグチャの私。
七香を見ると、七香の顔も涙でグチャグチャだった。
私たちは、お互いに泣きながら、そして笑い合った。
そうだ、絆のコードは切れやしない。
七香とのコードも、パパとのコードも、そして…
また新しいスタートが始まる。
<卒業の日のバイバイ 完>




