9−13 エピローグ・切れないコード(前)
4月1日。
3年生になった私は、新1年生の入学式のために学校に登校していた。
「あ! 紬!」
いつもの明るい声が、私の背中から響いた。
学校の桜はもう散り始め、まばらに残っている程度だったが、多くの新入生とその保護者で賑わっていた。
入学式中、3年生は、新1年生のために、合唱を披露したり、生徒会の説明をしたりした。
大部分は座っているだけなので、隣の七香と突っつきあいながら眠気と戦って過ごした。
入学式も無事終わり、七香と二人で下校していた。
「今日も運動部は練習か、ごくろーさんだね」
私はチラッと体育館の方を見た。
「…そだね」
七香も体育館の方に目をやる
「佐々木先輩も悠太もいないバスケ部かー」
私は下を向いて俯いてしまった。
七香が私の顔を覗き込んでくる。
「紬、帰りにいつものファミレス寄ってかない?4月になったし、また新作出てるかもだし」
「…うん、いいね」
七香が私の顔から目をそらさず、覗き込んでくる。
「ねぇ、紬。なんかあった?なんか今日暗いよ?」
「え?そうかな?そんなことないと思うけど…」
しばらく無言で歩く。
いつもの街の喧騒が、今日は驚くほど静かだ。
私と七香のローファーの音がコツコツと響く。
七香がこんなに喋らないのって、もしかして初めてかも。
「ねぇ、紬?」
「ん?」
「…アンタ、本当は悠太のこと、好きだったの?」
<つづく>




