9−11バイバイ(前)
時は戻り、卒業式が終わった春休み中。
私は、七香に悠太の転校の話を聞いてみた。
七香は当然知っていて、私には教えてくれていなかったらしい。
「なんか、お父さんが仕事で大変なことになったみたいで、地方に行くことになったみたい。ほら、ちょうど悠太の叔母さんの時」
大変なことってなんだろう?そういえばパパもその時忙しかったな。だから叔母さんの事件を3人で解決したんだっけ。
「なんで教えてくれなかったの?」
私はつい言ってしまった。
正直、悠太の転校の話なんて興味ないけどね。
「いや、それがさ。悠太に口止めされてたんだよね。自分で言いたいって。それも情報通としての信頼の証なのよ」
自分で言う?
あの悠太が私に?
なんで?
そんなことをぼんやり考えていると、悠太からLINEが届いた。
「公園に来てくれないか。話したいことがある」
やれやれ、また夜の呼び出しか。
私は急いでパーカーを羽織り、夜の公園に向かった。
近くの公園で、ブランコに座った悠太は、空を見上げていた。
公園の街灯が、そこだけをスポットライトのように照らしていた。
「来てくれてありがとう、紬」
「...転校するんだってね」
悠太は深く息を吸い込んだ。
「...うん。ごめん、紬には直接伝えたかったから、七香にも口どめしてたんだ」
「あの時、叔母さんの事件で助けてもらったお礼と、それから、親父の話がしたくて」
「紬、今までありがとう。オレの件とオレの叔母さんの件、助けてくれてありがとう」
私はなぜか胸がぎゅっと締め付けられるみたいに苦しくなった。
どうしたんだろう。
悠太の顔を正面から見れない。
こんなのパパから聞いたことない。
「あの時はオレもパニックになっていたし、キミや七香がいなかったらどうなっていたかと思うと、今でも恐ろしいよ」
「キミに「人との繋がりが、大事なセキュリティの絆」ってのを教えてもらった」
私は無言で悠太を見つめた。
悠太は次の言葉を探しているようだった。
「それと、今回の転校のことだけど」
<つづく>




