9−9 家族のライン
私と七香、悠太が考えた作戦はこうだった。
近いうちに、まとまった金額を詐欺師は要求してくる。
それがないと説得力に乏しい。
そのまとまった金額を見て、おそらく叔母さんの心に迷いが生まれるはず、そこに証拠を示して一気に畳み掛ける。
「これを見てください」
私は七香と集めた証拠を悠太の叔母さんー聡子さんーの前に出した。
・アレックスという人の顔写真が、イタリアの舞台俳優であること
・最初の5千円の寄付は本当だったが、それは信用させるための罠
・インターネット上にあった、他のロマンス詐欺の報告
・そして同じような手口が、今日本の至る所で起こっているという報告。これはパ
パが調べて送ってくれたもの
「悠太くんの叔母さん、あなたが見ているのは『偽りの未来』。本当の未来を見て
ください」
聡子さんは、それをじっと見ながら、放心状態になっていた。
重苦しい空気が私たちに重くのしかかる。
やがて、聡子さんは膝から崩れ落ち、床に手をつきながら嗚咽と共に声が漏れてきた。
「私もおかしいと思っていた…でも信じたかった、疑いたくなかった」
私たちは何も言えずに、立ちつくすしかできない。
どんな慰めの言葉も聡子さんの救いにはならず、聡子さんを惨めにするだけだろう。
パパならこんな時、どんな言葉をかけるのだろう。
そんな時、佐藤が聡子さんのそばにしゃがみ込んだ。
「叔母さん、俺がいる」
悠太の声が部屋に響いた。
「俺だけじゃない、親父だって、一緒にいるじゃないか。同じ家族じゃないか」
「今まで俺や親父のことを支えてくれてありがとう。だから、今度は俺が叔母さんのそばにいる。俺が支える!」
聡子さんは、泣き崩れていた。
その肩を佐藤がそっと手をかける。
佐藤の手の暖かさが私にも伝わってくるようだった。
私と七香は、寄り添って二人の姿を眺めていた。
「悠太、いいとこあるじゃん」
七香がそっと呟いた。
<つづく>




