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9−8 ギリギリのライン
聡子はオンラインバンキングを開いて、しばらく自分の残高を見ていた。
使う宛のないお金、自分が20年間働いて貯めたお金。
自分には子供もいない。いつか悠太のために使えたらと思っていたお金。
まるで自分の子供のように、小さい頃から一緒にいた悠太のためのお金。
でも、ちょっとぐらい、自分の好きなように使ってもいいのではないか?
これが自分の思う人に役立つのなら、300万円ぐらい。
そんなことを思っていた時、不意に悠太に声をかけられた。
「叔母さん、それ振り込んじゃダメだ!」
聡子は驚きを隠せず言った。
「え?悠太?あなた何を言っているの?」
「叔母さん、オレ全部知っているんだよ。叔母さんがアレックスって人とSNSでつながっていること。でもそれ全部嘘なんだ」
「え?そんなわけないでしょう?アレックスが嘘って?」
「悠太くんの叔母さん、本当なんです。」
私と七香は、一緒に悠太の横に立って訴えた。
<つづく>




