9−5 指のライン
その夜。
スマホの通知が鳴った。私と七香と佐藤のグループチャットだ。
「取れた。でも画面は写っていない」
その一言の後に、幾つかの動画が添付されていた。
私はその動画を見た。佐藤の叔母さんの指の動き。
いいぞ、いろんな角度から動画が撮影されている。
「佐藤、叔母さんの暗証番号だけど、多分次のどれか」
私は佐藤に候補となる幾つかの数字列を送った
「マジ?!」
「うん、叔母さんの指の動きを追ってみた。画面は写ってなかったけど、指の動きで数字は4桁で、考えられる組み合わせは、さっき送った5パターン。どれか気になる数字列はない?それから順番に試していって」
それから数時間後、佐藤からのLINEが来た。
「開いた!信じられない…」
SNSのスクショ画像が添付されていた。
やった!私は成功したことの安堵感と、ふと冷静になって言った。
「これ、本当はダメなんだよ、今回だけ特別。真似禁止ね」
七香のピースサインの絵文字が続く。
私は、早速送られてきた画像を元に調査を開始した。やり方は以前パパに教わっている。
「…あった」
相手の顔写真を画像検索したところ、日本では有名ではないがイタリアの舞台俳優の顔写真と一致した。
そして、同じく「国際ロマンス詐欺」に引っかかってしまった被害者のブログに「この顔に騙された」と投稿されている顔写真も同じものだった。
どうやら日本人をターゲットにしているみたいだ。
「これで詐欺だってことは証明できる、次は…」
私はパパが言っていたことを思い出す。
「人は信じたいものを信じ、見たいものだけを見るものなんだ。」
「おそらく、犯人はまだ本当の目的を果たしていない。今はいわば撒き餌の状態だ」
「だが、近いうちに、本当の目的を実行してくる。本当の目的、ある程度まとまった金銭の要求だ」
<つづく>




