9−3 パパのライン
紬:「パパ、今ちょっといい?」
パパ:「紬、どうした。今仕事中だから、あまり話せないが」
紬:「まだ忙しい?」
パパ:「今お客さんの事故対応中。しばらく忙しい」
紬:「友達の家族の人が、ちょっと怪しい動きをしていて」
私はパパに、佐藤悠太に聞いた話をLINEで伝えた。
パパ:「それだけではわからん」
紬:「そっか、そうだよね」
パパ:「不審な点はある」
紬:「え?どこ?」
パパ:「国際ロマンス詐欺」
紬:「国際ロマンス詐欺?」
LINEだと、どうも短文なやり取りになってしまう。
その後、パパの画面に収まりきれないくらいの長文LINEが送られてきた。
国際ロマンス詐欺とはSNSを使った詐欺なのだそうだ。
海外の人物を装って、SNSで繋がり、言葉巧みに金銭を騙し取る。
その理由は貧しい子供への援助とか、事前活動への援助など、人の良心に訴えかけるものが多いのだとか。
ちょっとだけLINE電話で話すことができた。
「紬、もし本当に国際ロマンス詐欺だったとしたら、その叔母さんを助けるのは並大抵のことではないぞ」
「え?そうなの?いつもみたいに、その相手の正体を暴けばいいんじゃないの?」
「紬、人は信じたいものを信じ、見たいものだけを見るものなんだ。どんなに周りの人間が『偽物だ』と訴えてみても、人の信じているものをひっくり返すことは難しいだろう」
「そんな。じゃあ、どうしたらいいの?」
「セキュリティは人の心だ。その叔母さんの良心に訴えかけることが必要だ。そしてそれができるのは、佐藤くんだけだ」
「佐藤が?」
「そう、おそらくその叔母さんは、心の拠り所をSNSに求めてしまっている。心の拠り所、そして十分な証拠。いいか紬、チャンスは一度だけだぞ」
<つづく>




