9−2 11月の事件
あれは、昨年の11月のことだった。
ミスタースケベこと佐藤悠太から、七香を通じて相談したいことがあると伝言があった。
「今度はなんのスケベ話?」
私は茶化したが、佐藤悠太の顔は真剣そのものだった。
佐藤悠太の話では、同じ家で暮らしている叔母の様子が最近おかしいらしい。
妙にウキウキして、夜中までスマホをいじっている。佐藤が話しかけても上の空、らしい。
この時初めて知ったが、佐藤悠太は小さい頃にお母さんを亡くして、佐藤悠太の父親とその妹さん、つまり叔母さんが母親代わりで一緒に暮らしていたらしい。
佐藤悠太の口ぶりから、叔母さんのことを本当の母親以上に慕っており、だからこそ心配していることが垣間見えた。
この事を父親に相談したかったのだが、仕事が忙しいらしく、ここ数日家に帰ってきていないとのことだった。
「ずっとスマホを見ているってのが気になって」
確かに、今更スマホ中毒でもないだろうに。
そんなに夢中になるコンテンツがあるとは思えない。
「何か新しい趣味とか、友人ができたとか?」
「それにしても、ちょっと異常なぐらいのハマり具合でさ」
「一度聞いたことがあるんだけど、『ちょっとね』とか『そのうちね』って、はぐらかすんだよ。しかも妙に楽しそうに」
「まあ、叔母さんのプライベートだから、言えないこともあるんじゃない?」
佐藤は若干言いにくそうに言った。
「でさ、悪いとは思ったんだけど、ついスマホの画面を見ちゃって」
「そういうのやめなよ、それプライバシーの侵害!」
全く、男ってのはどうしてこうノンデリなんだろう。
「そしたら、そこに『Satoko,ありがとう。確かに受け取ったよ』って、あ、Satokoってのは叔母さんの名前ね」
「受け取った?何を受け取ったの?」
「それがわからないんだ。たださ、怪しくない?苗字じゃなくローマ字の名前で呼ぶこととか、何かを受け取ったとか」
「うーん、それだけだと、ちょっと」
「ねえ、紬のパパに聞いてみたら、何かわかるんじゃない?」
七香がいつもの調子で聞いてくる。
「それが、パパの仕事も最近忙しいらしくて、会社に泊まり込みか、帰ってきても私が寝た後なの」
「なんだ、そっかー」
あからさまに七香はがっかりした顔を見せる
「でもLINEで送ったらみてもらえるかも」
私もちょっと気になったし。
<つづく>




