9−1 卒業の日のバイバイ
春の日差しが体育館の窓から降り注ぎ、卒業生たちの門出を祝っていた。
今日の主役は、バスケ部元キャプテンの佐々木先輩だ。
彼の周りには、スマホを持った女子たちの輪ができ、泣いている子もいれば、はしゃいでいる子もいて、ちょっとした阿鼻叫喚・地獄絵図の様だ。
本人は少し辟易している様子が見える。
その地獄絵図から、やっとの思いで抜けてきた佐々木先輩に、紬と七香は声を掛けた。
「佐々木先輩、ご卒業おめでとうございます!」
「おめでとうございます。」
七香の声は消え入るぐらいに小さい。
「お、七香ちゃんに紬ちゃん! ありがとう!」
弾けるような笑顔は、さすが校内1のモテ男。
笑うだけで「キラーン」って効果音が聞こえてきそう。
「バスケ部もギリギリまで活動してましたね」
「自分にとってバスケは恋人みたいなものだからね。大学に行っても続けるよ。女子の考えていることは、どうもよくわからないけど。バスケのことならわかる!」
…将来ノンデリにならなきゃいいけど。
佐々木先輩の将来に余計な心配をしつつ、ちょっと気になることを聞いてみた。
「そういえば、次のキャプテンって決まったんですか?もしかして、佐藤ですか?」
佐藤とは、佐藤悠太のことでバスケ部の2年生エース格の部員だ。
過去エッチな動画を見ているところを盗撮されたと脅迫するセクストーション詐欺に引っかかりかけた、ミスタースケベのことだ。
あのミスタースケベがキャプテンになったら、それこそバスケ部の一大事だ!部室にエッチなポスターが貼られたりして!
私はそんな光景を想像して身震いした。
佐々木先輩は、戸惑ったような顔を浮かべた。
「いや違うけど…だって悠太は4月から別の学校に行くんでしょ?」
え?
「え?あれ?聞いてなかった?悠太は転校するんだよ。家族の仕事の関係で、地方の学校に」
ちらっと七香の方を見る佐々木先輩。
横を見ると、七香が気まずそうにしていた。校内1の事情通が知らないわけないよね。
佐藤悠太とは11月の事件以来、まともに顔を合わせていなかった。
<つづく>




