8−6 絆(コード)の罠
「ありがとう、紬。まさか、あの認証コードが、銀行のキャッシュカードと同じくらい大切だったなんて」
私は小さく笑う。結局また七香の役に立つことができた。パパから教わった知識が、トラブルメーカーの七香を守る。
「あ、そうえいば、MFAの送信先はどこにしているの?SMS?認証アプリ?」
「どこって…メールだけど?」
「そのメールにアクセスするパスワードって?」
「同じにしたよ?わかんなくなりそうだし」
「だから、使い回しはダメっ!」
「じゃ、どうしようかな…26gi?とか」
「桁数足りないし…って、それ私の名前じゃん!」
「えー?だってそんなにたくさんパスワード覚えられないよー」
「MFAの送信先をメールにして、同じパスワードにしてたら、家の鍵と金庫の鍵を同じキーホルダーに付けているようなもんでしょ」
その瞬間、七香のスマホから、甲高く、不気味な通知音が鳴り響いた。さっき図書室で鳴った時よりも、ずっと大きく、不穏な音だ。
「七香、それって!」
私は身を乗り出して、七香のスマホ画面を指さした。
『不審なログイン試行を検知しました。アクセス元:〇〇国』
「まさか…もう、誰かに七香のメールのパスワードを試されてる!?」
しまった、さっきの図書室での通知音はこれだったのか!
「えっ…どういうこと?紬!?」
七香の顔から血の気が引く。
捨てられた犬みたいな目で私を見てくる。
こんな緊迫した状況にもかかわらず吹き出しそうになりながら伝えた。
「大丈夫、落ち着いて」
そうは言ったものの、怖くてドキドキした。
パパならこんなときどうするだろう?
パパなら…
今できること。
今、今…
「七香、パスワード変更するよ!同じパスワード使っているアプリ全部!」
私と七香は、顔がくっつきそうなぐらい同じスマホの画面を覗き込んでいた。
七香の設定が終わるまで。
パパがいたら、どんな風に言ってくれるかな?
<つづく>




