8−5 多層防衛の罠
「これで不正利用の大部分は防げるんだけど、さらに安全対策が準備されているの。セキュリティには多層防御が原則って話があって」
私は前にパパから教わったことを思い出しながら言った。
「えっとね。ATMの機械。ATMってものすごい堅牢に作られていて、使った人を常に録画するようにできているの。ATMコーナーって常に利用者が録画されているんだよ」
七香の瞳が丸くなる。
「えー、そうなんだー」
急に七香が前髪をチェックし出す。
「どしたの?」
「え?だってATM使う時撮影されてるんでしょ?ビジュ大事」
呆れた。
気にするところはそこじゃないでしょうに。
「だからSNSとかで『前回のログインは何時何分でした』って出るでしょ?あれは不正に使われていないことを利用者に確認させる意味があるんだ」
「へぇー、そんな意味があったんだ」
「そう、パパが言っていた。どんなに優れた技術でも管理することを忘れたら意味がない。一つの対策で満足せずに、セキュリティは物理、技術、管理の3要素が揃って最大の効果を発揮するって」
七香はすぐにスマホを取り出した。
「面倒とか言ってられないや!よし、今すぐこのSNSのMFA設定を完了させる!」
画面を操作する七香の横顔は、以前のパスワード騒動の時よりも真剣だ。
<つづく>




