8−3 食欲の秋の罠
「七香、まさかと思うけど、MFAは設定していないの?」
「何それ?」
「マルチファクター。ほら、たまに「6桁のコードを入れてください」ってやつ。」
「ああ、あのメールでくるやつね。あれもめんどいよねー、使おうと思ったら、メールを見て、コピーして、貼り付ける。時間経つと使えなくなっちゃうし。だいたいメール自体そんなに使ってないんだよね」
「メールだけじゃなくて、SMSとか認証アプリとかあるけどね。あれがMFAね。パスワードの欠点を補う方法でセキュリティの二つ目の鍵。ちゃんと使ってるじゃん」
私は前にパパ ーセキュリティオタクで数々のセキュリティ問題を解決してきたーに聞いたことがある、最も分かりやすい例えを出すことにした。
「めんどくさいかもだけど、MFAって大事だよ。じゃ銀行のATMでお金を引き出す時のことを考えてみて。銀行のセキュリティはね、2つの要素で守られているの。それがMFA…」
「紬、ちょっとシー、ここ図書室だよ」
「え?あんたがそれ言うの?」
まあでも、確かに図書室で話すことではないか。
「だから、ほら、今、秋の新作がさ」
七香はチラチラ図書室の出口に目線を送っていた。
なんとなく七香の言いたいことを察した私は、机の上に広げた勉強道具をカバンにしまった。
なんだか私も小腹が空いてきた。
今はお腹のマルチファクターが優先か。
<つづく>




