7−11 2人のオタク
「一度疑いの目を向けてしまうと、どうしても偏見が生まれてしまう」
確かに先生は山岸くんが犯人だと決めつけていたような感じがある
「先生とかは疑いの目で見ていた..」
パパは一呼吸置いて言った。
「だからこそ、俯瞰的な視点、多角的に捉えるという日頃からの習慣が必要だ」
私はあの時のことを思い出していた。
パパの言葉。
「そう、私もパパの言葉に助けられたんだよ」
パパは厳しい顔を崩し、優しく微笑んだ。
「色眼鏡で見なかった紬の対応があった。だからこそ山岸くんは前を向いて『ゼロから再構築』に向き合うことができたのだろう」
パパはそこで大きなため息をついて言った。
「ただ…」
「ただ?」
パパの瞳に、再びプロのセキュリティ専門家としての好奇の光が宿った。
「山岸くんのPCのコピー、見てみたかった。そうすれば根本から潰せていたかも…」
やれやれ、ここに別次元のオタクがいた。
一瞬、私のスマホにある山岸くんのSNSのスクショをパパに送ろうかと思ったが、止めておいた。
もう事件は解決しているのだし。
「パパ、人を信じる心を守るのがセキュリティでしょ?」
私の言葉に、パパは痛いところを突かれたというように、カップ片手に苦笑いを浮かべた。
リビングの窓の外には、無数の家の明かりが広がっている。
その光の一つ一つに、PCがあり、スマホがあり、誰かの生活がある。
誰かのPCを勝手に操る「見えない悪意」は怖い。
でも、私とパパ、私と七香のように、目に見えない「信頼のコード」で繋がっている関係も、確かにここにある。
私は手元のスマホをぎゅっと握りしめた。
画面の向こうの誰かを信じるために、私たちは知恵という盾を磨くのだ。
今回はパパ無しで解決できた。
でもやっぱり私はパパの子だ。
「……ありがと、パパ」
小さく呟いた感謝は、コーヒーの湯気に溶けて消えた。
<リモートコントロール 完>




