7−10 パパへの報告
出張から帰ってきたパパに、私は今回の事件のあらましを説明した。山岸くんが何にパニックになり、どうして遠隔操作を許してしまったのか。
私の推理と、最終的な対処まで、全てを話した。
パパはいつものように、私の言葉を一言一句逃さないという真剣な眼差しで聞いていた。
その真剣さが、私にとっては一番の理解者である証だった。
「なるほど。優秀なプログラマーである彼が、自分は大丈夫だという過信と、警告音による恐怖に足をすくわれたわけだ」
パパは静かに腕組みをしたまま、事件を要約した。
「実際に目の当たりにすると、冷静になるのは難しい。権威のある人物の言葉を無条件で信じてしまう、ソーシャルエンジニアリングの「後光効果」に似ているな」
「うん。だから、私は彼に伝えたよ。『一番の脆弱性は、ソフトじゃなくて、警告音に慌ててしまう人間の心だから』って」
私がそう言うと、パパはわずかに目元を緩ませた。
「そうだな。セキュリティは、技術よりもまず人の心を読み解かなければならない。その思いが山岸くんの無実を証明し、さらに彼自身に立ち直るきっかけを与えたのだろう」
私はパパの言葉を噛み締めた。
「私が間違った対処をしていたら、山岸くんはただの『サイバー攻撃の犯人』として、心の傷を抱えたままになっていたかも」
パパは腕組みをしながら、一呼吸おいていった。
「紬、これはパパもたまに間違ってしまうことがある。だからよく聞いてほしい」
こういう時のパパの言葉は重みがある。
<つづく>




