6−11 夕日
数日後、自宅のリビング。
パパが淹れてくれたコーヒーの、香ばしい匂いが漂う。
私が事件の顛末を話すと、パパは頷いた。
「指示役は捕まらなくても、山下くんと指示役のチャネルを組織は失った。犯罪組織にとってしばらく目立った活動はできなくなるだろう。何より、彼が『恐怖』から解放されたことが一番の成果だ。紬、お前たちが繋いだ『人』と『信頼』という防壁が、彼を救ったんだ」
パパの座右の銘、「セキュリティとは日常に存在する。」
その意味が、少しだけ分かった気がした。
翌日、私はいつもの通り七香と下校した。
「いやー、一件落着! これで山下くんも部活に集中できるね!」
と七香が伸びをする。
さすがの七香も、この話題を学校内で話すのはやめておいたみたいだ。
でもずっとうずうずしていたみたい。
「まったく、面倒なことに巻き込まれたもんだよ」
私はため息混じりに言った。
「てかさ」
七香がニヤニヤしながら私を覗き込む。なに?
「悠太くん、最後ちょっとカッコよかったよね? 『一人じゃない』とか言っちゃって!」
「はぁ!?」
私は素っ頓狂な声を上げた。
「どこが! あいつは相変わらず『ミスタースケベ』! ノンデリの!」
「えー、でも紬、あの時ちょっと顔赤かったよ?」
「なっ……! 赤くない! 夕陽のせい!」
私は顔に集まる熱を隠すように、カバンを持ち直して走り出した。
「先帰るから!」
「あ、待ってよ紬ー!」
七香が笑いながら追いかけてくる。
まったくもう。私の平和な日常を早く返してほしい。
<寒暖差 完>




