1−4 解決と甘い誘惑
結局、私たちは図書室を飛び出し、駅前のカフェへやってきた。七香の希望で、テーブルの上には期間限定の抹茶パフェ。七香はスプーンを握りしめたまま、期待に満ちた顔で身を乗り出す。
「ねえ紬、どうすれば“最強パスワード”を作れるの? 難しすぎると絶対忘れちゃうし……」
私は少し考えてから、ふっと笑った。
「じゃあ、英語の授業で習ったフレーズを使ってみようか。――“Time is Money”って覚えてる?」
「えー……どこかで聞いたような……」
首を傾げる七香に、私はスマホの画面に指を走らせながら続ける。
「この“Time is Money”、”時は金なり”のフレーズをちょっとアレンジするんだ。例えば……“i”を“1”に置き換える。それから“money”の最初の文字を“$”をする。そうすると」
私は画面を彼女に見せる。
「t1me1s$oney」
「おおっ!」
七香の目が丸くなる。
「ね? もとの”timeismoney”フレーズと置き換えルールは覚えておく必要があるけど、強くて覚えやすいパスワードができるでしょ?」
「これだったら、辞書に載ってい言葉でもないし、数字の記号も入っているから相当難しいパスワードだと思うよ」
「なるほど……! これなら私でも覚えられる!」
「もしどうしても忘れそうだったら、”timeismoney”だけどこかに書いておいたらいいよ。それが見られたとしても、置き換えのルールが分からなければ使えないし」
七香は感心したように頷き、すぐさま新しいパスワードを入力し始めた。
その横顔を眺めながら、私は心の中で小さく笑う。――結局また利用されてる。
でも、悪くはない。
パパから教わった知識をこうして友達の役に立てるのなら、十分意味がある。
「……ありがとう、紬。ほんとに助かった」
スプーンをくわえた七香が、照れくさそうに笑う。
「じゃあ次は“応用編”を教えてあげる。パパ直伝のやつ」
「やった! でも次の授業もカフェでね!」
七香の無邪気な笑みに、私もつられて笑った。こうして私たちの“事件簿”は始まったばかりだ。
<1章 セキュリティ高校生 紬 完>




