6−6 対決と告白
翌日の放課後。私たちは山下くんを体育館裏に呼び出した。
体育館裏は、普段は誰も寄り付かない死角だ。 ひび割れたコンクリートの隙間から、枯れた雑草が力なく頭を垂れている。
「な、なんですか、先輩たち……」
私たちに囲まれた山下くんは、壁に背中を押し付け、小刻みに震えていた。七香と私のことは聞かされてなかったのだろう。
「太一」
佐藤悠太が低い声で切り出す。
「お前、急に羽振りが良くなってヤバいことになってるだろ。全部話せ」
「な、何のことか……それはただのバイトで……」
彼の声は、乾いた風にかき消されそうなほど弱々しい。
その瞳は、私たちを見ているようで見ていない。
見えない「恐怖」という鎖に、がんじがらめにされている目だ。
「これはただのバイトじゃない!」
私は一歩前に出て、スマホの画面を彼に突きつけた。
「昨日の夜、あなたが撮っていた住宅街の写真。一昨日の深夜2時の投稿。そして、あなたがフォローしている『#即日入金』のタグ。これでも、何のことか分からない?」
山下くんの顔が、急速に青ざめていく。
「これはもう『ただのバイト』じゃない。『犯罪』の片棒を担がされてる。……今ならまだ間に合う」
その言葉が、彼の最後の砦を崩した。
「う……うわああああ!」
山下くんはその場に崩れ落ち、嗚咽を漏らし始めた。
「最初は……本当に、ただ荷物を受け取るだけだって……」
彼はすべてを白状した。
SNSで見つけた高額バイト。
軽い気持ちで手を出したこと。
最初は数万円の報酬に浮かれていたこと。
しかし、身分証を送った途端、指示がエスカレートし、怖くなって「やめる」と言ったら、自宅の外観や両親の職場の写真が送られてきたこと。
通知が鳴るたびに心臓がはねる。でも手にした金額が一種の罪悪感と屈辱感を煽った。
「もう、どうしたらいいか……」
彼は、パパが言っていた「恐怖」によって、完全に縛り付けられていた。
<つづく>




