5−2 ソーシャルゲーム
「ねえ、紬。知ってる?あのソシャゲ。私たちの学年だけじゃなくて、他校でも流行っている、例の有名なヤツ」
昼休み、七香が私の席にやってきて、興奮気味に囁いた。
「あの、Youtubeとかでたまに流れてくる広告のゲームでしょ?やったことはないけど」
「それがね、そのアカウントの乗っ取りが多発しているんだって」
七香は、こういう噂話やトラブルの話題を嗅ぎつけるのが本当に早い。
七香の言う「例のゲーム」というのは、誰もが知る大人気ゲームのことだ。クラスでも多くの人がプレイしているらしい。
「乗っ取り、ね。珍しい話ではないけど、そんなに急に流行るなんて変だね」
私は、七香から差し出されたパンを一口かじりながら答えた。
「でしょ?しかも、七香の同じグループの人のアカウントが乗っ取られて、全然知らない人がプレイしているみたいで、もうゲーム内はむちゃくちゃだよ!あーあ、せっかく育てたキャラだったのに!」
七香は、眉をひそめて話す。
彼女はトラブルメーカーではないけれど、なぜかトラブルに巻き込まれたり、トラブルに遭遇した人の相談役になったりすることが多い。
その相談事の多くが、最終的に私のところにやってくるのだ。
「アカウント乗っ取りで、なりすましか。なんか嫌な感じだね。それにしても、特定の層で急に増え始めたってのが、やっぱり変だわ」
乗っ取り自体は、パスワードの使い回しや、フィッシング詐欺で起こりうる。
でも、特定のコミュニティの中で、まるで感染病のように広がるのは、何かしらの共通点がある証拠だ。
「そうそう、それとね、被害に遭った人たち、みんなが口を揃えて言うんだけど、そのアカウント乗っ取りのちょっと前に、なんかゲームのログインが不安定になったり、変な通知が来たりしたって」
七香は、身を乗り出して、声を潜める。
「変な通知?」
私は、七香の話を聞きながら、頭の中で情報を整理する。
アカウントの乗っ取り。特定のコミュニティ内での流行。
そして、乗っ取り前の「ログイン不安定」と「変な通知」。
一般的な乗っ取りの手口と、少し違う気がする。
これは、もしかしたら、よくあるパスワード漏洩なんかじゃなくて、もっと技術的なトリックがあるかもしれない。
今夜にでもパパに相談してみるか。
<つづく>




