4−5 秘密
「ねぇパパ、佐藤君のメールに『本物のパスワード』が書かれてたって。どうして?」
「いいかい、もし本当に、そのスマホなりPCなりに侵入できていたとしたら、紬ならどうする?」
「えっ、どうするかな……」
「紬が悪い人でお金を得ようとしたら、だ。想像してごらん」
「うーん、そうだな。オンラインバンキングとかQR決済の情報を盗もうとするかな?」
「そうだな。その場合、本人に侵入できている事がバレない方が良いだろう?バレるまで好きに覗き見できるのだから」
「それはそうかも……」
「つまり、自分が侵入できていると言って来ている時点で嘘だってことだ」
なるほど、そう言われれば、そうかも。
「じゃあ、脅迫メールに書かれていたパスワードってのは?」
パパは満足げにタブレットを操作し、世界中の情報漏洩事件の一覧を映した。
「過去に流出したパスワードを、犯罪者は“ダークウェブ”で買う。100万件で100ドルだ。日本円で1万円ちょっとだな。」
「や、安っ!」
「彼らはそれを『証拠』のように貼り付ける。実際は、偶然一致してるだけだ」
「つまり……本当にハッキングされたわけじゃない?」
「そう。使い回したパスワードが原因だ」
私は唖然とした。
「怖い……。じゃあ、どうすればいいの?」
「まず1つめのポイント、パスワードを使い回さない。サービスごとに別々のパスワードを使うことが重要だな」
「そして2つめのポイント、漏洩事故が起こった時に通知が来ているはずだから、その時にパスワードを変更すること、そしてさいごの3ポイント……」
「強いパスワードを使う!英語の授業で習ったやつ!」
「覚えてたのか?」
「ギリギリ!」
二人で笑い合った。
「運じゃなく意識の問題だ、紬」
「はいはい、セキュリティ先生」
パパは苦笑した。
「それと、佐藤君には“絶対払うな”と伝えなさい。盗撮動画なんて存在しない」
「うん、分かった」
笑いながらも、私は心の中で誓った。佐藤君のように苦しむ人をもう出したくない。
<つづく>




