4−3 告白
放課後の体育館裏。
七香は鏡で前髪を何度もチェックしていた。
「七香、先輩は君の髪型よりボール見てるって」
「ひどい!」
そんなやり取りの最中、バスケ部の練習が終わり、佐々木先輩が姿を現した。
汗に濡れた髪、タオルで首をぬぐう仕草。
学校中の女子が憧れる理由が分かる。
「七香さん、えっと、それから……」
「二年A組の紬です」
私が先に名乗ると、先輩は爽やかに笑った。
「ありがとう。実は、佐藤のことでちょっと気になっていることがあって」
その声のトーンに、七香が息をのむ。
佐々木先輩は昨夜のことを話してくれた。
夜のコンビニで偶然佐藤君を見かけたこと。
突然逃げるように走っていって、そしてそれを佐々木先輩が追いかけて、理由を聞いたところ、
「女子にこんな事言っていいか、わからないんだけど、その、ここだけの話で」
佐々木先輩は、言いにくそうに続けた。
佐々木先輩によると、佐藤君は『ビデオを見ていたところをハッカーがスマホに侵入して録画された。十万円払え』と脅されているらしい。
「ビデオ?ってなんのビデオですか?」
佐々木先輩は目を逸らしながらいった。
「それはその……ほら男だったら誰でも見るようなヤツ……」
それ以上突っ込むのをやめた方が良さそうだ。
七香は俯き、私は黙って聞いた。
「たまたま俺がコンビニで見かけたんだ。止めたけど、完全に怯えてて。親にも言えずにいる」
佐々木先輩の瞳には、焦りと責任感が混ざっていた。
「七香さんから聞いたけど、紬さんは、この手の難事件を解決できるって」
七香め、何を言ったんだか。
「女子に頼むことじゃないけど、どうしていいか分からなくて。その、今日が期限らしいんだ」
真剣な声。
でもホント女子に言う事じゃないよ。
「わかりました。ちょっと専門家に聞いてみます」
「専門家?」
「そう言うのに詳しい人を知ってるので」
「マジか! 助かるよ!」
その瞬間、先輩の笑顔が少し近づいた気がした。
学校の女子一番人気の先輩にこんなこと言われたら、七香でなくても頬が熱くなる。
七香が後ろで「ずるい‥‥」と呟いたのは、聞こえなかったふりをした。
<つづく>




