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1−2 パスワードは「秘密の合言葉」
「七香、それは本当に危ないんだよ」
私は真剣な声で告げる。
「えっ、そんな大げさな……だってパスワードなんて記号とか大文字とかばっかで意味不明だし」
「意味はあるの。パスワードは、システムが『あなたが本人だ』って確認する唯一の手段なんだよ」
私は例え話をした。キャッシュカードと暗証番号。持ち物と秘密、両方そろって初めて本人確認が成立する。
「ネットでも同じ。ユーザーIDはみんなが知る入り口。でもパスワードは七香だけが知る“秘密の合言葉”。それを人に教えるのは、銀行の暗証番号を渡すのと同じなんだよ」
「……え、そんな。じゃあ私、友達に暗証番号教えたみたいなもん?」
「そう。もし悪意を持たれたら、七香のふりをして勝手にログインされる。個人情報を盗まれるかも。買ったグッズをキャンセルされるかも。最悪、七香の名前で誰かを傷つけることだってできちゃう」
七香の表情から笑みが消え、唇が震えた。
「……怖い。私、もう取り返しつかないの?」
その問いに、私は一瞬迷う。でもすぐに首を振った。
「まだ大丈夫。今すぐパスワードを変えれば、まだ守れるから」
<つづく>




