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佐藤悠太は、画面に映る一文を何度も読み返した。
――「十万円を要求する。ビットコインで支払え。期日までに支払わなければ、お前の最も恥ずかしい瞬間の動画を家族と友人に送る」
喉が詰まり、息ができない。背中を汗が伝う。
佐藤悠太は自問する。
夜中にこっそり見ていたアダルトビデオ。
その姿を録画された? そんなはずない。けど……カメラのランプ、光ってたか?
覚えてない。
嘘だと思いたかったが、メールには自分が使っているパスワードも記載されていた。
メールの通りハッカーが侵入したのは確実らしい。
もしそんな動画が出たら…もう学校に行けない。外にも出られない。
人生が終わる。
メールの最後にはこう書かれていた。
「ビットコインの代わりにプリペイドカードでも可」
十万円。
そんな金、高校生の自分にあるわけがない。
それでも、映像をばらまかれるくらいなら……。
佐藤悠太は震える手で親の財布を開き、数枚の1万円札を抜き取った。
「参考書を買う」とでも言えばいい。
自分自身に言い聞かせた。心臓がドクドク鳴る。
吐き気が込み上げ、親の金を盗んだ罪悪感と動画がばらまかれる恐怖が胃の中で混ざり合った
夜、街中にぽつんと光るコンビニへ。
指定されたプリペイドカードの棚の前で、佐藤悠太はフードを深く被り、周囲に人影がないことを何度も確認した。
蛍光灯の冷たい光が、彼の顔の青白さを際立たせる。
佐藤悠太は指定された十万円分のプリペイドカードの束を手に取り、レジへ向かった。
「合計十万円になります」
店員の声が遠く聞こえる。
これで、終わる。
そう思った瞬間――
「おい、悠太じゃないか?」
背中が凍った。
「さ、佐々木先輩!?」
バスケ部のキャプテン。尊敬する先輩が、スポーツドリンクを片手に立っていた。
「お前、こんな夜中に……それに、それは!?」
レジ台に積まれた大量のプリペイドカードを見て、先輩の眉がひそむ。
言葉が出なかった。
顔が真っ赤になり、手のひらに汗がにじむ。
まさか、よりによって、先輩に見られるなんて。
喉の奥から、声にならない悲鳴がこぼれた。
気づいたときにはカードをレジに残したままコンビニを飛び出して、夜の街へ走り出していた。
「おい!悠太!」
遠くから佐々木先輩の声が聞こえた。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
世界に自分ひとりだけが取り残されたようだった。
<つづく>




