3−6 邪魔者は去る
週末、パパに遅れて、七香と一緒に正美ちゃんの家に来ていた。
正美ちゃんの両親とパパが話をしている。
「裏チャットの件は学校に報告済みです。そのうち収まるので、心配しなくて大丈夫でしょう」
力強いパパの言葉に、正美ちゃんの両親の顔に安堵感が浮かんだ。
「先日お話ししたように、正美ちゃんは大きなストレスを抱えていました。そしてその原因はご両親の不仲にあります」
正美ちゃんの父親らしい人が口を開いた。
「はい、わかっています。我々は正美のことまで気にしてなかった。親失格ですね」
パパは首を横に振った。
「失格なんてことはないです。実際こうしてお二人ともやり直そうとされている。元々は些細な行き違いだったのですから、修復も早いでしょう」
正美ちゃんの母親が小さく頷いていた。
パパは二人を見て、優しく声をかけた。
「さて、今日は最後の仕上げにきました。正美ちゃんの心の絆を取り戻すセレモニーです」
「紬、七香ちゃん、みんなを連れてきて」
私と七香は、パパに言われた通り、子供達を正美ちゃんの家に入れた。
明美ちゃん、直人くん、忠司くん、仲良し4人組。
私は3人に声をかけた。
「いい?みんな、さっきも説明した通り、正美ちゃんはずっと悩んでいたの。一人で苦しんでいた。だから今回のことを責めないであげて。また一緒に遊ぼうって言ってあげて」
明美ちゃんが元気よく言った。
「わかっているよ紬ちゃん!私たち仲良し4人組だからね!」
私は頷いてパパに合図を送った。
「どうでしょう?この3人を正美ちゃんの部屋に案内しても良いでしょうか?」
正美ちゃんのお父さんとお母さんは、小さく頷いた。
それをみた3人は、2階にある正美ちゃんの部屋へ上がって行った。3人の声が聞こえる。
「バカ。勝手に消えるなよ! オレらがどんだけ心配したか分かってんのか!」
「また一緒に帰ろう、正美」
「次はさ、怖くないやつにしような。みんなで笑えるやつ」
3人の声に混じって、正美ちゃんの声が聞こえる。
「……ごめん。みんな、ありがとう」
小さな声が空気を溶かした。
チャットではない、生身の声。
正美ちゃんの両親が涙ぐんでいる。
温かい涙だ。
「う……うわぁぁん……よかった……!」
私の隣で七香が号泣していた、なんでアンタが泣くのよ?
でも、私も耐えきれず、目頭が熱くなる。
パパは何も言わず、腕を組んで立っていた。
優しい目で、正美ちゃんの両親、正美ちゃんの友達、その再生と再会を見守っていた。
ゆっくりと踵を返し、号泣している七香と、私に声をかけた。
「二人とも、そろそろ失礼しよう。私たちはここでは邪魔者だ」
七香が泣きながら私とパパを交互に見た。
そうだね、七香も当事者だ、でも。
私は七香の肩を抱いて、そっと言った。
「正美ちゃんはもう大丈夫。私たちの役目は終わったよ」
壊れかけていた絆が、涙の中で再びつながる。
まるで見えない回線が、もう一度通電したみたいに。
<つづく>




