3−1 コックリさん
体育館の大きなドアが、バタンと閉まった。まだ暑さが残る夜の空気が、明美たちの肌をじっとりと撫でる。
息が、フワフワと白く浮いてみえる。正美は懐中電灯の光の中で、ブルブル震えていた。
直人、忠司、正美、そして明美の四人は、夜の体育館に忍び込んでいた。
数週間前のことだった。
正美が「自分の体操服がない」と言って、ちょっと騒ぎになった。
ちょうど体育の前で女子だけで着替えをしている時だった。
結局、その日正美は体育を見学することになった。
後日、学校の裏のゴミ捨て場に捨てられてたのを、事務員の人が見つけたらしい。
その時はクラス内会議で先生が話をしたり、正美の両親も学校に来ていたが、結局犯人はわからずじまい。
それからも、断続的に正美のものがなくなる事件は続いていたらしい。
・キャラクターのペンケース
・ノート
・ヘアピン
明美は心配して「これって、いじめじゃない?」って正美に声をかけたけど、正美は「いじめじゃない」って泣きそうな声で返していた。
そんな話を、いつも遊んでいる4人組の直人、忠司にも相談した。
直人と忠司は憤慨して「必ず犯人を見つける」と正美に約束をしていた。
その翌日、忠司が学校にオカルト本を持ってきた。
「コックリさんって知ってる?」
忠司の持っていた本に「コックリさん」のやり方が書いてあった。
・誰にも邪魔されない場所
・暗い場所
・普段使わないひと気のない場所
・空気の流れがない場所
・文字の書いた大きい紙を用意する
・コインを用意する
・参加者全員がコインに指を乗せて、「コックリさん、コックリさん、きてください」と呼びかける
「ねえ、本当にやるの?コックリさん」
いつも理屈っぽい忠司の声は震えていた。
「ここまで来たらやるに決まっている。犯人探しだ」
直人はムキになっていった。
明美と正美は、寄り添って、二人の男子のやり取りを見ていた。
文字を書いた模造紙を床に広げて、4人はその周りに座り、真ん中に置かれた1枚の十円玉に指を乗せた。
<つづく>




