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4.マネキネコ-3


「うーん、私は見た覚えないですねー」

「……」

 で、天奈と黒衛に事情を説明すること一分半。大雑把な状況説明だったが、まぁ別に込み入った事情なんて無いので比較的シンプルなのだ。

「そう。ま、目撃談なんてアテにしてなかったけどね。アンタ、結構大雑把に生きてるし」

「ひどッ!? 先輩、いくらなんでもそれはないです! ……大雑把……むぅ」

 私の言葉に反論する天奈。しかし、思い当たる節でもあったのか、数秒で意気消沈してしまった。大雑把というより勢いで生きていると言うべきだったか。

「ま、猫なんて意識してない限り覚えてないでしょ。見かけても忘れるっていうか、別に大したことないって感じで記憶が上書きされちゃうっていうか」

「……いえ、流石に覚えているのではないでしょうか。住宅街ならさて置き、この辺りに野良猫は少ないですし」

 意気消沈した後輩のフォローのつもりで言った台詞に、黒衛さんからまさかの反論。確かに、静かな住宅街に比べて、開発が進んで喧騒に包まれている駅前で猫を見た覚えはない。見たとして、それは保健所の人間に捕獲された野良猫くらい。

「え?私、猫なんて家の近くでも見たことないっすよ?」

「…天奈さんの家は住宅街というより駅前寄りの位置にありますから。あの辺りも、そんなに野良猫とか野良犬とかいないですよ?」

 ついで言うと、宮乃市は今野生の犬とか猫の撲滅に力を入れているらしいので、いたら直ぐ保健所に捕獲されてしまうのだ。確か昔、愛犬だったか愛猫だったか、その手の動物保護団体とごたごたを起こしたことがあったと記憶している。

「むー、そういうクロエちゃんは猫見たの?」

「しょっちゅう見ます。私の住むアパートは住宅街の奥の方にありますし、早衣様のアパートの近辺も結構います。……ですが、早衣様の言うような白猫は見た覚えがありません」

 二人からの目撃談は無し。まぁ、こんなところであっさり情報が手に入るとは思ってなかったので、別に問題はない。ワタシがアテにしているのは目撃情報よりも、人手なのだ。特にこの二人は、実働部隊としてはかなり頼もしい部類に入る。

「ねぇ天奈、黒衛、このあと暇なら手伝ってくれない? ちょっと一人だと骨折れるのよコレ。かといって霧璃の使用人さん達と一緒にっていうのはちょっとね」

 なんというか、あの人達はあの人達の間の連携がすごすぎて、他人の私が立ち入る隙がないというか。逆に足引っ張ってるんじゃないだろうか? と錯覚してしまうくらい凄い連携プレイっぷりなのだ。関係者以外立ち入り禁止な集団とは手を組みたくない、とまでは言わないが出来る限り遠慮しておきたい。

「うーん。ごめんなさい先輩、私この後塾があるんで無理っす」

「あー、そうか、アンタもそういう時期っつーか、そういうところは真面目なのね」

 雪枝天奈、高校三年生。現役受験生というやつである。普段は勢いで生きているくせに、こういう比較的真面目なところは真面目に押さえている。なので別に驚くことはない。

「……先輩、そこはオーバーリアクション気味に驚いて欲しいところっす。えぇ!? アンタが塾!? みたいな?」

「……いや、アンタがそういうところ真面目なのは知ってるから。というか、驚いて欲しかったらもうちょっとおどけてみせなさい」

 ちぇー、と肩をすくめる天奈。

 一方、黒衛といえば。

「それで、どこから捜索を開始すれば良いのですか?」

 すでにやる気満々モード。頼もしいことこの上ないが、ここまで従順だとなんだか悪い事をしてしまったような罪悪感を感じてしまう。

「んー、とりあえずワタシと一緒に行動。駅前を中心に捜索するから」

「承知しました」

 席を立つ。すでに食事も完了しているし、長居しているとあっという間に日が暮れてしまう。

 特に解散に対する反対意見も出ず、ワタシ達は店外へ。ワタシと黒衛はこのまま一旦駅前の広場へ向かい、天奈はこの近くの進学塾へ。丁度この店がお互いの目的地の真ん中くらいに位置しているので、必然的にここで天奈とはお別れである。

「あ、そうだ、先輩。何もしないのもアレなんで、私も塾の友達に猫の話聞いてみますね! ひょっとしたら見たって子いるかもしれないし!」

「ん、頼む。もし当りがあったら連絡ちょうだい。それじゃ、またね天奈」

 またね、と片手を振って走り去って行く天奈を眺めながら、ワタシと黒衛は駅前広場へ。


「……さて、それじゃ、始めますか。黒衛、アンタの目アテにしてるよ」

「はい、お任せください」


 さて、それでは猫探し第二ラウンドと参りましょう。


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