序文、あるいは独白。
そう、忘れもしない…と言ったら嘘になるのか。まぁ、いいや。
とにかくあまり思い返したくもないし、特に思い返す必要もない話。そういう点では忘れてしまえたら楽なのだけれど、あいにくと記憶力は良い方なのでしっかり記憶している。
それは十月と十一月の狭間。秋の終わりと冬の始まりの頃。
そもそも、あの事件は一体どこから始まっていたのか。そんなことは知るよしも無いけれど、しいて言うのならば、まぁ、きっと誰かの悲願とかいうやつなのだろう。それはきっとワタシが想像するよりも昔の、そして深く深く絡み合った運命とか因果とか思考の果て。
錆びついた歯車は、最後の時まで止まらず。軋みながら、終焉を待っていた。
そんなものにワタシが巻き込まれたのは、そもそもワタシ自信の悪運と言うべきなのか、それとも単純にこの身に流れる血脈の影響なのか。
老いた魔女が笑う。老いた猫が嘆く。
どうでもいいか。考えたところでどうとでも言えるものだし。ワタシの主観では、あくまでもあれは巻き込まれた事件。たとえ連中が最初からワタシを式に組み込んでいたのだとしても、たとえワタシ自信が選択した故の結論だったのだとしても。
『さぁ、おわらせましょう?』集った因果は収束して終息へ。
さてさて、それではいい加減前置きはここらへんにして。そろそろ、語りましょう。
宣告。宣言。告知。予告。予言。全てが収束した、その時だ。
始まりの時は、十月二十八日午前十一時。
始まりの場所は、S県宮乃市、その一角にある高級マンション。
始まりのタイトルは、追憶の約束――あるいは、クロネトカミ。