駅長は魔法使い
役目を終えた精霊たちが乗る電車。
駅長である魔法使い、クオルが今日も見送る。
気配を感じ、かぼちゃのパイを作る手を止め顔を出す。
「こちらで合ってますか」
不安そうな顔をして聞いてくる精霊に優しい声色で答えて椅子に案内した。
「電車が来るまでしばらくありますのでゆっくりしていってくださいね」
クオルが笑顔で言うと精霊は安堵の笑みを浮かべた。
駅長室に戻ったクオルはかぼちゃのパイを焼き紅茶を淹れて、最後に魔法をかける。
くんくんと匂いを嗅ぎつけていた精霊に「どうぞ。 今朝採れたかぼちゃで作ってみました」
「いただいてよろしいのですか?」
「ええ。 どうぞ」
精霊はかぼちゃのパイを一口食べるとさらに和んだ顔になり話しはじめた。
「300年、守り続けてきました」
クオルは柔和な顔をしてじっと聞いた。
「最後の主を先日見送りました」
話し込むことしばらく。
「なんだかすみません。 私ばかり話してしまい」
「いいんですよ」
にこりと笑ってクオルは精霊を見送った。