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異界の探偵執行人  作者: マスカレイターズ
探偵と少女
8/9

8話 動き出す事件

「んで? 何がわかったんだ」


 レイはヤマモトに話を振る。

 レイ、メアリー、ヤマモトの三人は、以前話をした喫茶店で、パウエル邸襲撃事件について話をしようとしていた。

 心なしかヤマモトの額には汗が浮かび、珍しく緊張しているのが見てとれる。


「もしかして、犯人につながる決定的な証拠が出たんですか!」

「メアリー、そう焦るな。」


 やや興奮気味に話をせかすメアリーとそれを嗜めるレイに、ヤマモトは突然頭を下げる。


「すまないッ!」

「うおっ、どうしたんだ急に」

「もしかして具体的なことは何もわからなかったとか......」


 いきなりの謝罪で困惑するふたりにヤマモトは続ける。


「言ってた疑問については調べてたんだが......捜査が打ち切られた......

 本当にすまん!」


 その言葉を聞いて固まるメアリー、しかしレイの反応は違った

 

「そうか......わかった、とりあえず調べてた内容についてだけでも教えてくれ」

「えっ...あぁ、とりあえず」

「えっ...ちょっと待ってください」

 

 少し反応に戸惑いながらも、続きを話そうとするヤマモトの台詞をメアリーの疑問が遮る


「捜査が打ち切りって...もう現場の情報が入らないってことですよね...ヤマモトさん...」

「まぁ、そう...なる......」

「そんなことって...そんなことって...グスッ」

「メアリー?」


 肩を震わせ軽くうつむくメアリー。よく見るとその目には涙が浮かんでいた


「私は両親を、グスッ みんなを殺した犯人を捕まえるために、レイさんに依頼したんです...なのに捜査が打ち切られてしまったら、私は...私は何を頼ればいいんですか......グスッ...あんまりですよ......」

「メアリー...」

「お嬢さん、落ち着いてください。」


 突然後ろから声がしメアリーが振り返ると、そこにはタキシードのような服をした片眼鏡の男が立っていた。


「マスター、聴いてたのか」

「えぇ、お嬢さん、お二方は何も、これで終わりなどとは言っていませんよ」

「え?...でももう捜査は」

「それはあくまで表向きの話です、お忘れですか? レイ様は探偵だと言うことを」


 その言葉にメアリーは、ハッとしレイたちを見る


「ということは......」

「あぁ、もちろん依頼はこなさせて貰う...それが俺の仕事だからな」 

「俺もできる限りのことはさせて貰う、調査団のヤマモトとしては動けないが君たちの友人のヤマモトとしてはうごける」

「お二人とも...ありがとうございます、ありがとうございます!」


「よし! それじゃ話を続けるか

 二人は再び向き直り話を再開する。


「それで、何がわかったんだ?」

「あぁ、まずお前の言ってた油についてだが、成分を調べた結果、軽油だとわかった」

「軽油か...となると入手経路は限られるな...付近の軽油を所有してるところに不審な点は?」

「付近だとラーベル商会、ゲルム商会、スチュワード鉄道会社だが何処も計算はあっていた」

「なるほどね」

「後もう1つわかったことがあって、襲撃した奴らと思われるものたちの死体が発見された、ほとんどの致命傷が頭部に頭部に弾丸をぶちこまれたことによるものだ、他の傷を見てもかなりの腕前の集団に襲われている」

「え?......殺されてたのか! いや、だとしてもなぜ射殺を...しかもそんな滅多撃ちに......銃はまだ価格が安くは無い、メアリーの話と現場の状況だけでも最低15人ほどがいたはずだ。それが全員......」

「では犯人はもう死んでるという...」

「いや、まだ傭兵に依頼したやつが残ってる、そしてそいつはおそらく傭兵たちを殺したやつと関わりがある......ありがとうなやっさん、今度一杯奢るよ」

「おう、楽しみにしてるそれはそうとレイ、少しいいか?」

「何だ?」


 ヤマモトはレイにのみ聞こえる声で話し出した。


「この問題、相応に根深いぞ、さっきはあんなことを言ったがてを引くなら今のうちだ...今ならまだ」

「わかってる...だが俺は引かない...」

「だがお前は...」

「大丈夫だから...」


 そう言うよくレイは震える右手を必死で押さえており、その瞳は過去を見ているようだった


 カランカランと音を立て扉がしまると店内には妙な沈黙が流れた。


「マスター」

「はい...」

「倉庫からあれを出しておいてくれ」

「...かしこまりました。」

 

 ――――――


「レイさん、大丈夫ですか?」

「何がだ?」


 事務所に戻ってからずっと無言だったレイにメアリーが問う。


「先ほど見たことのない表情をされてたので」

「あぁ?、まっ、たいしたことじゃねぇよ。」

「そう...なんですか......」

「とりあえず今は情報整理だ。まず、」

 とレイが言いかけたところで......。


 カンッ、


 奇妙な音がし、音の発信源を見たレイは目を疑った。

 それはまごうことなき爆弾であった。

 

「伏せろ!!」


 レイはそう叫びながら、メアリーに覆いかぶさるように机の陰に隠れた。

 その直後、爆発音が響く。すると続々と入口から入ってくる武装し、黒いローブを着た人間たち。


「ちっ、奇襲かよ、メアリー! 奥に逃げてろ!」

「はっ、はい!」


 事務所の奥に逃げるメアリーを追いかけようとする襲撃者たち。しかしその前にレイが立ちはだかる。


「この先にはいかせない」

 

 そう言うとレイは、左足を前に出し体をやや猫背にして、格闘の構えをとる。


「来い!」


 その言葉にこたえるように襲撃者の1人が動き出し他もそれに続く。

 レイは目の前の机を蹴り飛ばし牽制したのち、右からきたナイフの突きをいなしその流れで背中に肘を入れる。

 更にマチェットで切りかかってきた相手の手を抑え、腹に2発拳を入れたのち顎に掌打を叩き込む。

  直後、ピストルを構えた男が視界の左端に移る。


「うおっ!」


 発泡された弾を紙一重で避け、銃を蹴り飛ばしそのままの勢いで鋭い回し蹴りを側頭部に叩き込む。

 そうしてレイは次々に来る敵を、受け流し、弾き、しのいでいく。

 しかし一向に敵の減った感覚がない。何度弾き飛ばされ、叩きつけられても敵は立ち上がり襲いかかってくる。

 

(こいつらっ、素人じゃない...かなり訓練されてやがる)


 次から次に、絶え間なく襲ってくる襲撃者にレイの体力は削られ、徐々に危ない場面が増えていく。

 そしてついにレイの脇腹にトンファの重い一撃が入ってしまう。とっさに防御をとり致命傷は防いだレイだったが、代わりに壁に身体を強く打ち付ける。


(やっぱ鈍ってやがる...畜生...ここまでか)


 襲撃者たちが奥の部屋に入っていくのをただ眺めることしかできないまま、レイは意識を手放した。

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