表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シン・ブラザー大戦 FOR 三田駿/世界と戦う兄弟達の物語/スマフォ版  作者: 長谷川 記央
Chapter 2: Where the Enemy Lives
7/14

第7話 「田崎 慎吾」

示度が無人ヒト型兵器の消滅地に姿を現した。

俺は示度の姿を遠くから確認した。

黒い土に、赤く光る砂が微かに混ざっている。

「ずいぶんと派手にやるもんだな。」

俺は赤く光る砂から、魔力が放出されているのを確認した。

示度がこちらを見たように思えた。

冷が「なにか気になることでもありますか?」と、俺を追ってきた。

「無人ヒト型兵器から、ヒトの記憶のようなモノが流れ込んできた。」

「ヒトの魂を動力源にしているということですか。」

俺は「よく分からないな。」と、答えた。

冷が俺の顔を見た。

「無理をしているように見えますが。」

「無理はしてないよ。」と、俺が答えた。

冷が寂しそうな顔をしたように思えた。

「そうですか。」と、冷が答えた。


俺が、隆の病室を訪ねた。

隆が「今日は来客が多いな。」と、招かざる客のように俺を扱った。

俺が「大丈夫か?」と、声をかけた。

「大丈夫なら、ここにいないだろ。」

隆が不愛想にしている。

「それもそうだな。」と言うと、俺は椅子に座る。

しばらくの沈黙が続く。

「無人ヒト型兵器が爆発するときの、あの映像はなんだ。」

「俺にもよくわからないな。」


俺はベリーショートに流れ込んできた映像を思い出した。


潤と少年が会話する姿。

学生生活を楽しむ少年。

文化祭で出店をする少年。

少年が、焼きそばを作り、学生に売っている。

普通の学生生活の映像が流れる。

そして、最後に、学生が魔法炉に入り、大召喚獣となりこの世を去って行く。


隆が「おまえの正義は何だ?」と、俺に問う。

「俺は正義にはなれないな。」と、俺が答えた。

隆が「じゃあ、おまえは悪か。」と、問う。

「犠牲はどこの世界にも存在する。見て見ぬふりをしているだけだ。」

俺の言葉を「正義は必ずある。俺が実現する。」と、すぐに否定した。

「隆らしくて、いいな。」と、俺は笑った。

隆は「バカにしているのか。」と、怒っている。

「バカにしてはない。」

隆がもう一度「バカにしているだろう。」と、さらに怒った。

俺は隆の頭を軽く撫でた。

「隆はまっすぐに、自分の信じるモノを信じればいいさ。」

俺の手が頭に触れると、隆は怒るのをやめた。


隆の病室を出ると、公園のベンチに座って休んでいた。

名古屋の方向を見ると、悪寒が走る。

「アンラッキーですかね。」と、第一艦隊の田崎たかざ 慎吾しんごが声をかけてきた。ただ、俺は慎吾のことを思い出せずにいた。

「第一艦隊の田崎 慎吾です。」と、慎吾が語義を強めた。

「今回は援護、ありがとうございました。」

「いえいえ・・・」と、俺の隣に座った。

俺と慎吾は空を見ていた。

心地の良い風が、2人の間を抜けて行く。

「第一艦隊のほとんどが、森ノ宮隊長、連に助けられたんです。」

「俺たち、戦艦グリーンは、生きるために集まった家族なんだ。似てるかもな。」

俺は慎吾の境遇に、自分たちを重ねていた。

「家族か、いいですね。」

慎吾は、俺たちのことを羨ましそうに言った。

彼はどことなく淋しそうに思えた。

「もともと名古屋出身なんです。大阪との衝突で、街が消滅して、今はここに。」

「自分の意志で、戦っているのか?」

「はい。連に恩返しをしたいので。」


ヒト型兵器西成が、次から次へと街を破壊していく。

隠されていたヒト型兵器が発見され、破壊されていく。

森に火が放たれる。

人の逃げ場が封じられていく。

爆弾が投下され、建物が粉々になる。

姉が僕の手を、しっかり握っている。

爆風を僕と姉を襲う。

「慎吾!!」と、姉の声がした。

僕は猫のぬいぐるみを、ギュッと抱きしめた。

微かな意識の中で、ヒト型兵器が近づいてくることを感じる。

「子どもがいるのか。」

連の若い声がする。

連と誰かが言い合いをしている。

「軍紀違反であっても、見殺しにはできません。回収します。」

少し堅い体の上に乗せられ、大阪に連れて行かれるのだった。


慎吾が過去の経緯を話してくれた。

「僕は死んでいた人間なので。」

「大阪を憎んでも、間違えじゃない気がするけどな?」

「幼かった時は、正直、大阪を恨みました。けど、苦しみながら戦っている隊長を見て、そういう気持ちは和らいでいったって、いうか。今が大切だなって思いませんか?」

俺は慎吾の言葉に頷いて見せた。

公園の前に、今話題の野菜ジュースの販売車が止まる。

「ラッキーラッキー。話題の野菜ジュース!!ゲットしてきます。」

慎吾は何を話しているんだろうと思い、話をそらそうと野菜ジュースを購入しに走った。

「僕にも一つください。」

スマが野菜ジュースを購入していた。

俺も販売車に近づいていく。

「いらっしゃい。」と、おじさんが客を歓迎する。

スマに野菜ジュースをわたすと「新鮮野菜ジュース。おいしいだろう。」と、顔を見た。

スマが早速、野菜ジュースを飲む。

「はい。おいしいです。」

慎吾が「早く。俺にも頂戴。」と、おじさんを焦らせる。

「そこの兄さんの分もだね。」

おじさんが野菜ジュースを二つ差し出した。

慎吾が「今回は、おごりますよ。」と、俺に野菜ジュースを手渡した。

スマが面白くなさそうに、俺と慎吾を見た。

「そういえば、2人は何してたんですか。」

慎吾が「公園で、時間つぶし。」と、答えた。

「そうだったんですね。」

スマが野菜ジュースを一気に飲み干した。

おじさんがその姿を見て「やるね。サービスしてあげよう。」と、野菜ジュースをもう一つ差し出した。

まわりにいた人が、スマの飲む勢いを見て、販売車に寄ってくる。

「さあさあ、早くしないとなくなっちゃうよ。」

俺たちは販売車から離れて「特にすることなかったからさ。」と、俺がスマに答えた。

慎吾が「それじゃあ、そろそろ警備があるので。」と、仕事に戻っていく。

俺は「俺たちも戦艦に戻るか。」と、スマのご機嫌を伺う。

スマが「もう少し、時間つぶししましょう。」と、俺の前を歩く。

商店街まで歩くと、飲食店が建ち並んでいた。

「ソフトクリームが食べたいです。」

スマが俺にお店を指さした。

俺が「はいはい。」と答えた。

「お菓子の材料を購入していこうかな。」

スマがソフトクリームを購入すると、ソフトクリームを食べ始める。

スマが俺にソフトクリームを購入しないのか、という目をした。

「俺はいらないから。」

スマが「じゃあ、一口だけ食べさせてあげましょう。」と、ソフトクリームをスプーンにのせる。

スマがスプーンを口の前に差し出した。

俺はソフトクリームを口の中に入れた。

「なかなか、おいしいな。」

スマが「でしょう。」と、得意げに答えた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ