第3話 「物資強奪作戦」
「定時となります。作戦開始。」と、冷が指揮を執る。
「スカイブルー。発進します。」
目の前には、ガラクタの鉄くずが散乱した山岳部が広がる。
「自然を破壊したなれの果てか。」
俺はあまりみたくないものを見て、気分を害した。
軍事施設の明かりが遠くに見える。
レーダーがこちらを捕捉し、ヒト型兵器アキンドが攻撃を仕掛けてきた。
スマが得意げにブルーウェーブで、ヒト型兵器アキンドを押し流していく。
「今だな。」と、スマに声をかけた。
スカイブルーがスピードを上げて、格納庫に入る。
俺はコクピットを開けると、ヒト型兵器きしめんに飛び乗った。
「あんまり見るなよ。」
「・・・はい?」と、スマが空返事をした。
「だいたいの敵は、一掃しました。」
息が上がるスマを確認できる。
「主砲・一斉発射。残りのヒト型兵器を撃破します。」
「どうか、たくさん当たって!!」
「運次第のようなことは言って欲しくないですね。美佳。」
「陵の腕は信じてるからね。」
戦艦グリーンのブリッジの声が聞こえた。
俺は乗り心地が悪いヒト型兵器に、手間取っていた。
「ところで、乗り心地はどう?」
「服を着たい。早く、任務を終えたい。」
美佳にそう聞かれると、さらに気分が悪くなった。
「こちらは、第一艦隊所属、須那 真理子である。」
「こちらは、戦艦グリーンです。」
「これより、戦艦グリーンの迎撃を行う。無条件降伏をする場合には、命は奪わない。」
「ありがとうございます。こちらに降伏の意思はありません。」
真理子が敬意を表し、こちらに警告をしている。
冷が真理子に対応すると、ヒト型兵器きしめんが遠距離から戦艦に攻撃を仕掛けてきた。
「きしめんは、遠距離攻撃を得意とするから、厄介です。」
俺に陵が敵の位置を送ってきた。
「これより、回避行動に移る。」と、章が攻撃に備えている。
「了解。3機を撃破する。」
俺の機体を捕捉する、新たな機体を確認した。
「さあ、機体の性能は互角。どちらがプレイヤーとして上か、はっきりするよね。」
遠距離砲に反応しきれずに、機体に当たる。
「魔力で機体の装甲をあげているのね。」
さらに、別の機体が俺の機体に接近する。
俺の機体を補助するように、スカイブルーが前に現れた。
「モニターに映らなかった。」
スマが「これでおしまいです。」と、剣を突き出す。
恵利の機体の、左腕が切り離される。
「魔法を使うなんて、厄介です。」
「恵利は退いて。」
「真理子。あとはお願い。」
スカイブルーの背後から、奈々のヒト型兵器がライフルを構えている。
「この距離なら。」
スカイブルーの機体が、左右に揺れる。
「この程度なら。」
スカイブルーが大きな波を創造し、奈々のヒト型兵器を押し返す。
「流れるプールじゃないんだから!!しかも、被弾!!」
俺はスカイブルーを援護するために、遠距離砲を打った。
「押し流される場所まで計算されてるなんて、エグい。」
「なかなか、腕が立ちますね。」
真理子が盾を前にして、攻撃に備えている。
「こちらは新都市大阪国の示度である。現在、桑名から名古屋を占領することを図っている。第一艦隊・隊長西成により、名古屋は我々に統治されることであろう。」
大阪から全回線に通知されている。
上空には桑名の映像が映されている。
その映像が流れると、敵は撤退していった。
「お疲れさまでした。」
スマの声を聞いて、戦闘が終わったことを確認する。
俺がくしゃみをすると、スマが微笑んだ。
「・・・寒い。スマの機体は、温度調整が自動にされるから、よかったな。」
「あはは。笑わせないでください。」
「それにしても、早くヒト型兵器から降ろさせてくれ!!」
戦艦グリーンに帰還すると、誰も出迎えがいない。
俺がヒト型兵器から飛び降りると、スマもスカイブルーから飛び降りた。
「今日は静かなんですね。」と、スマが辺りを見る。
「整備班もいないのか。何かあったかな。」
名古屋共和国と新都市大阪国との戦いがモニターに映っていた。
「そういうことか。」
スマが「どういうことですか?」と、聞く。
「名古屋共和国の戦線から離脱するには、あのバリアを何とかしないとならない。」
スマが「そういうことですか。」と、納得する。
スマが近くにあった大きめのタオルを、俺に投げた。
「ありがとう。」と、それを受け取った。
「体を冷やしたらなら、早く暖まらないと。」
「気遣い。ありがとう。」
俺は服を着ると、ブリッジに向かった。
陵が、木曽川に展開された大型バリアの映像を確認している。
「運が良いのか、悪いのか。」と、陵の小言が聞こえた。
「この一線が終わり次第。こっちが狙われるな。」
冷が「それは間違いありません。」と、同調した。
「レッドスター。早めに回収しないと、問題があるな。」
陵が戦力不足のことを、目で訴えてきた。
「今は、戦線を離脱するのが先かと。」
「それはそうだな。」と、陵が不満そうな顔を見せた。
「陵。申し訳ない。俺の力足らずで。」
俺は陵を気遣って、言葉を発した。
「そういうことをいいたいわけではないんだ。」
章が様子をみて、話しに入ってきた。
「あのバリアって、大量のエネルギーが必要だから、そうはもたないだろ?」
「それはそうだ。」
「そしたら、バリアが解除したときがチャンスだよな。」
冷がビックリして、章を見た。
「・・・はい。新都市大阪国と名古屋共和国がぶつかり合う瞬間を狙って、名古屋共和国の戦線から離脱するのが望ましいです。」
「防壁に数穴あけて、突破するしかないな。」
章が俺に、ピースをして見せた。
俺はスカイブルーに登場した時のスマとのやり取りを思い出した。
「どうして、レッドスターにこだわりを持つのですか?」
スマが俺に疑問を打つけた。
「レッドスターは、古のヒト型兵器。」
「スカイブルーも、同様ですよね?」
「ああ・・・遙か昔の記憶が封印されている。」
「レッドスターに搭乗したことがあるんですか?」
「分からない。ただ、レッドスターは大切なモノを守るために必要なモノだと感じるんだ。」
「初めて、スカイブルーに搭乗した時。言い表せない安心感を得られました。」
「安心感?」
「誰かに包まれていくような。」
「戦うための道具とは、かけ離れた感覚だな。」
「そうですね。」
スマが俺に笑って見せた。