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第2話 「スカイブルー」

俺は、スカイブルーの性能の高さに驚いていた。

青く光る機体は、骨董品とは思わせないほど、デザインが良かった。

俺は「ありがとう。」と、スマを迎えた。

「・・・いえ。」

スマが照れているようにも見えた。

冷がスマに軽く頭を下げると「ようこそ、戦艦グリーンに。」と、彼を受け入れた。

真々ままだ りょうが、スマにバスタオルを投げた。

「搭乗スタイルが全裸というのは、問題だな。」

スマがバスタオルにくるまった。

美佳が「照れたりしないんだ。」と、疑問を打つけた。

「別に、見られて減るものじゃないから。」

美佳は、スマの経緯を知らない。

だから疑問だったんだろう。

「まあまあ、美佳、疲れてるんだからさ。」

相澤あいざわ あきらが、お得意の珈琲を入れて、スマに差し出した.

「・・・ありがとう。」

スマが戸惑っているようにも見えた。

「各自持ち場に戻ってくれないか。すぐに戦闘になるだろ。どうせ。」

クルー達は、ため息をつきながら、散っていく。

俺が「悪い奴らではないんだけど、騒がしくて悪いな。」と、気遣う。

「気にならないから。」

思わぬ返答に戸惑ったのは自分だった。

「とりあえず、新しい部屋に招待するから、そこで休んでいてくれてかまわないから。」

「ありがとうございます。」

俺がスマを部屋に連れて行くと、彼は窓際に座った。

窓の外を見ると、しばらく何も言わずにいる。

このまま部屋を後にするべきか戸惑った。

しかし、かける言葉が見つからずに部屋を出て行った。


スマのことを考えながら、ブリッジに戻った。

「どうかしたの?」と、冷が声をかけてくれた。

「いや。どうしたもんかなって。」

「スマのこと?」

「よく分かりました。」と、俺は軽く笑った。

「どうすればいいかって、普通にすればいいじゃない。」

冷の言っていることは、いつも当を得ている。

「それがなかなか難しいから、こうやってるんだろ。」

冷が「いつものことじゃない。新しいクルーが補充されただけ。」と、淡々と言う。

「まあ、そうなんだけどさ。」

「兄弟だからって、特別扱いしない方がいいと思うけど。」

「いろいろ厄介ごとが増えますか?」

冷が「はい。」と、あっさり答えた。


スカイブルーの前に立つスマの姿を見つける。

「スカイブルーが気になるのか?」と、声をかける。

スマが「懐かしいんです。なぜか。」と、答えた。

「そっか・・」

スマが俺の顔を見て「どうして、僕を買おうと思ったんですか?パイロット適正があったから?」と、少し低い声で聞いてきた。

「この戦艦に君が必要だから。」

スマが「どういう意味ですか?」と、質問を重ねた。

「そのままの意味だよ。」

俺はスマにどうやって説明して良いのか、分からなかった。

スマが笑って、言葉足らずの自分を受け入れてくれたように思えた。

「君のことを利用する意図はなかったんだけど、結果そうなってしまう。悪いね。」

「そういうの慣れてますから。」と、間髪入れずに返事が来る。

その言葉を聞いて、無性に悲しくなった。

「・・・ごめん。」と、スマを強く抱き寄せていた。

「どうして謝るんですか。」

強く抱き寄せても、スマは顔色一つ変えない。

人に触れられることに抵抗がない。

そういうことを実感して、余計に辛くなった。

「どうしてなんだろうな。」


翌朝、冷が会議室に全員を集めた。

「新しい作戦を提案します。」

章の顔が一瞬だけ強ばったように見えた。

「岡崎城跡地にある施設に攻撃を仕掛け、ヒト型兵器を回収する。」

「そうなると、芽原沢から奇襲をかけるのかな?」

陵は、冷の作戦を理解したようで、モニターに地図を写した。

冷が「そうです。」と、答えた。

章が「けど、ヒト型兵器は一機しかない。そんなこと不可能だろ。」と、呆れている。

俺は章に同感して「確かに、無理があるな。」と、言った。

美佳が「スマは、それでいいの?」と、スマを見ていた。

「命令があれば、それに従います。」

スマの言葉が、俺の胸に刺さった。

「ただ、ヒト型兵器を回収するっていっても、パイロットの輸送はどうするんだ?」

「スカイブルーに駿も搭乗してもらいます。」

俺は「予想はしてたけど、そういう展開なのね。」と、苦笑いした。

「あの、ヒト型兵器に乗り換える際に、服がほしいな。」

冷がこっちを冷たく見ていたので、つい言葉を漏らした。

「そういう問題か!!!」と、美佳がツッコミを入れる。

陵が改めて「ヒト型兵器一機強奪するのが目的ということかな、冷。」と、問う。

「はい。陵は反対しますか。」

「コスパが悪いだろ。けど、現実的ではあるな。」

陵は賛成したいようだが、リスクを考えてて、どちらともとれる返事をしたように取れた。俺が「乗り換え問題は、置いておいて、スカイブルーとの整合率は大幅に減少するはずだが。」と、聞いてみた。

「それは問題ないはず。」

俺は相変わらずの冷の作戦に、逆に吹っ切れた。

「全滅させられたら、すべての物資を回収する。無理なら、ヒト型兵器一機だけを回収する。そんな感じかな。まあ、仕方ないか。冷が言うことなら。」

冷の鋭い目が、俺に突き刺さった。

「作戦は、本日1600に行います。」

「夕方なのね。準備がよろしいこと。」

俺はスマの手を取って、スカイブルーに向かった。


スカイブルーの前で、俺は服を脱いだ。

「作戦の前に、練習したいから、頼む。」

スマも服を脱いだ。

スマが先にスカイブルーに搭乗する。

スマの上に座るが、背丈の関係で、操縦しにくかった。

「悪い。俺が椅子に座って、その上に、スマは座ってもらっていい?」

「・・・はい。」

コクピットに青い液体が投入され、体を覆う。

俺は自然と目を瞑っていた。


俺の中にスマの記憶が流れ込んできた。

辛くて涙が止まらない。

スマが「誰にも知られたくない過去・・・」と、呟く。

「そうだな。人間は汚らわしいモノでもある。」

「自分の欲求のためなら、他人を傷つける。お金で解決しようとする。」

「人間の本質がそういうモノなら、滅亡してしまえばいいよな。」

「・・・はい。」

スマの言葉に、俺は言葉を詰まらせながら「でも、無償の愛を与えてくれるヒトも現れるから・・・信じて欲しい。ヒトを。」と、言った。

俺は呼吸が上がり、息が出来なくなった。

「コクピットから出ますか?」と、スマが言った。

「いや、大丈夫。」

スマが俺の手を強く握った。

「よく分からないけど、スカイブルー。今は、僕たちに力を貸して欲しい。」

スカイブルーが正常に起動し始めた。

「整合率45%か。これならいけるか。」

「・・・はい。」


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