第12話 「花火」
俺は機体から降りると、戦艦グリーンのブリッジに急いだ。
「状況は?」
陵が「戦艦西成と戦艦連が、こちらに向かうようです。」と、答えた。
隆が「戦艦西成をなんとか抑えられれば、大丈夫だ。」と、答える。
冷は何も答えようとしない。
章は美佳のことを気にしているようだった。
「次の攻撃に備えるしかないか。」
あまり時間がないことを確認して、ブリッジを後にした。
廊下でスマがこちらに走ってきた。
「発進準備をお願いします。」
「本当に申し訳ない。」と、俺はスマに謝る。
スマは、ただニコッと笑った。
「あんまり気にしすぎると、体に毒ですよ。」
「ああ、そうだな。ありがとう。」
俺は、スマに同じように笑い返した。
「なんか、不自然です。」
スマは笑いを堪えていた。
「おかしかったか。」
「はい。おかしかったです。」
俺もスマにつられて笑っていた。
「そういえば、こんなふうに笑ったの、久しぶりかもな。」
俺は戦いに疲れていることを実感した。
「まだ戦闘が継続しているに、変です。」
俺は「変だな。」と、さらに笑って答えた。
隆がこちらに歩いてきた。
「何やってるんだ。遊んでる場合じゃないだろ。」
隆が俺に睨み付ける。
「そうだな。」
「俺もベリーショートで出撃する。」
スマが「僕がいるから、大丈夫ですよ。」と、隆に言った。
「相手のことを熟知している俺の方が有利だろ。」と、隆がスマを睨み付ける。
俺は二人をやり合う姿を見て、なぜか愛おしかった。
「それはそうですけどね。」と、スマが意地悪い顔をする。
「まあまあ。隆にも頑張ってもらおう。」
俺は隆の頭を軽く撫でた。
スマは羨ましそうに俺を見ている。
冷が「そろそろ時間です。」と、水を差してきた。
「ああ。分かってる。ありがとう。」
俺は隆に礼をいうと、格納庫に急いだ。
「レッドスター。発進します。」
「スカイブルー。発進します。」
「ベリーショート。発進します。」
戦艦西成が戦艦グリーンの射程に入る。
「西成。おまえの正義は何だ?」
隆が西成に問う。
西成が「勝利こそ、正義だ。そう思っているのだろ。隆。」と、大笑いした。
「よって、私が正義だ。」と、付け加えた。
俺は、西成の傲慢さが嫌いだった。
戦艦西成からヒト型兵器西成が発進すると「新たな機体を補足。」と、冷が新手を告げる。
「敵だとすれば、最悪です。」
スマが応戦の準備をするが、事態は芳しくない。
俺は「隆。頼む。」と、隆に頼っていた。
隆が「魔法の使い方って、わからねぇ。けど、やるしかないな。マジックシールド展開!!」と、叫んだ。
戦艦グリーンと戦艦西成の間に、魔法の楯が現れ、攻撃を防ぐ。
「おっと。戦艦グリーンには、落ちてもらったら困るんで。」
聞き覚えのある声がする。
「そっちの戦艦は、大丈夫そう。」と、俺に問いかける。
「シン東京連合。どうして?」と、俺は戸惑った。
「だから、まだ落ちてもらったら困るわけ。」
里桜が呪文を唱え始めると、今まで聞いたことがない言葉が羅列される。
「春に舞う桜のごとく、今、儚く散りたまえ。ピンクスモーク!!」
ヒト型兵器櫻から、ピンク色の魔法の花びらが戦艦西成に放たれる。
戦艦西成が静止し、地面に着地する。
「どういうことだ。」
「動力が動きません。」
「科学と魔力の双方のエネルギーを吸収してしまう花びら。これで、しばらくは身動きがとれなくなるよね。こちらの攻撃のエネルギーも吸収しちゃうから、いいんだか悪いんだかって魔法だけど、今回は良いと見た。」
ヒト型兵器堂嶋と松風庵が、空に大砲を打つ。
夕暮れに、きれいな花火が打ちあがった。
蒼太が「隆!!頑張ってきてください!!」と、戦艦グリーンに手を振った。
「ありがとう。恩に着る。」と、隆は蒼太に感謝の気持ちがあふれ出た。
難波が「次会うときは、フェアプレイでな!!」と、章と美佳を激励した。
ヒト型兵器櫻は、戦艦グリーンが無事に戦域を離脱したことを確認すると、姿を消した。
戦艦グリーンは別府に到着した。
「あの中に入れるのは、俺と隆とスマかな。」
「俺かよ。」と、隆は目を大きく開いた。
博多周辺のドーム状に展開されている魔法が、ヒトを遮断している。
「示度博士から何を聞いてきたのかしら。」
冷は俺を睨み付けた。
「いや。何も隠してないよ。ほら、示度博士が、博多には俺とスマと隆は入れるから、なんとかなるってことをだな。」
冷は「もっと早く報告してください。」と、冷ややかな声を出した。
陵が「では、博多に潜入して頂くのは。」と言うと、スマが手を上げた。
「はい。僕が行きます。」
「いや、スマに戦艦グリーンを守ってもらいたい。」
スマが不満そうな顔をする。
「スマしか頼れないんだ。頼む。」
俺はスマの機嫌を伺った。
スマが「僕しか。」と言うと、俺はすかさずに「そう。スマが。」と、答えた。
「ならしかたないですね。」
俺はスマの機嫌が良くなり、ホッとした。
隆が「俺が行くのか。」と、俺を見る。
「そうだ。協力してくれ。」
「まあ、仕方ない。」
隆が面倒くさそうに返事をした。
章が「こっちはしばらく待機か。」と、不満そうにしている。
「無駄に動くことも難しい状況です。」
陵が戦艦グリーンの消耗状況を見せてきた。
「まあ、あんまり状況は良くないけど、できることをやってほしい。」
俺は逃げるように、ブリッジから姿を消した。
俺は大浴場で疲れを癒やしていた。
俺は機嫌良く鼻歌を歌う。
隆がドアを開けて、洗い場に入ってきた。
「ああ。」と、隆が言った。
「お疲れ様。」と、俺が答えた。
隆がシャワーで体を洗うと、湯船に入る。
「今回の作戦。胸騒ぎがするんだ。」
隆が小さい声で、俺に話しかけてきた。
「嫌な予感がするってことか?」
「ああ。」と、隆がすぐに答える。
「博多魔法国は、いろいろと情報が隠されていることが多いからな。」
「俺が行くことも、仕組まれているような気がしてならない。」
俺が「どうして、そんなことを思うんだ?」と、言った。
「俺が戦艦グリーンにいるのも、示度博士の計算のような気がするんだ。」
「まあ、そうかもしれないし、そうでないかもしれないな。」
隆がなにかを思い出しているようだった。
「どうした?」と、俺が問う。
「蒼太が俺を助けてくれた。あいつ。」
「友達だったんだな。」
隆が何も言わずに頷いた。
俺は友達といえる存在がいる隆が、うらやましく思えた。
隆の肩を軽くたたいた。
「まあ、あんまり考えすぎても、なるようになるさ。」
俺は、博多にいる潤を迎えに行くことを考えた。




