妻、帰る
毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。
Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)
お盆に妻が帰宅してきた。海外勤務で私は日本に妻はドイツに駐在している。夫婦と行っても形だけの夫婦みたいとか言われる。それなら遠洋漁業の仕事や海上自衛官の仕事はどうなんだろうと思う。
お互い、キャリア優先なのでこういう別れて暮らす選択をしている。
でも、今回は日本に帰国してから3ヶ月しか経ってない。
彼女がドイツにいるときに、ネット通話で「どうしたの?」の聞いたら、
「実は妊娠したの。この前帰国したときに大当たりしたみたい」
え? それは嬉しい事だ。自分の子供か……なんか実感湧かないけど。
「僕の子供だよね」つい念を押してしまう。だって、逢うの年に数回なんだし。
「当たり前でしょ、何言っているのよ」
まあ、確かに計算上は合ってる。
「でね、出産のために日本に帰国するから」
なるほど。
「あなたもドイツ派遣されるよう会社に交渉してくれない」
無茶を言う。彼女は大学でドイツ語学科だったけど、私は情報学科だ。英語ならなんとかできるが、ドイツ語の単位はC評価でギリギリだった。
それでも、会社に相談したらドイツからリモートで就業できることにしてくれて、仕事の面では日本語を使えることになった。
妻は時短勤務となり、空いた時間は私にドイツ語を教えることになった。というか日常会話がドイツ語まみれ。
出産後ふと、妻の友人が来た。大学の男の先輩。勘が怪しいと囁く。もしかしてと、DNA鑑定を依頼した。すると、私と赤ちゃんとの間に親子関係はないとでた。
この前の帰国時に寝取られたらしい。