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相談事

作者: 雉白書屋

 とある町に小さな社があった。

社自体はかなり前からあるものだが、近年、綺麗に建て直されてからというもの

訪れる町の者が絶えず、手入れやお供え物など大事にされていた。

 

 が、それには理由があった。なんでも、その社の前で手を合わせて祈ると

夢の中に神が現れ悩みを聞き、そして答えをくれるという。

 正確には自分の夢の世界から神がいる空間へと道が繋がり

歩いて移動しているわけだが、細かい事は気にしていない。ただただ並び、待つ。

 そう、夜になるとこの町の住人は列を成して神に相談事をするのだ。


 神は快く相談に乗っていた。そのおかげで社は磨かれ、大事にされているのだ。

ありがたいのはお互い様。ただ……。


「あのぅ、神様。うちの洗面所が汚れていて見る度に気分が悪くなるのです……」


「……それはスポンジで磨けばいいじゃないか」


「スポ……ンジ? ああ、あれですね。それで……どこで手に入るのでしょうか?」


「……その辺でだ」


「その辺……?」


「百円ショップとかで」


「とか?」


「百円ショップで!」


「百円ショップ……? それは……」


「駅前のビル! 最近、その中にできたやつ!」


「ビル……?」


「大きな建物!」


「ああ、あれですか! それで……スポンジはどういった形のものがいいのでしょうか?

大きさは? 色は? あと――」


 人々の質問に対し、頭を掻き、顔を歪める神。それも仕方がない。

何せ、この町の住民みんながこの調子なのだ。

 連中は眠った状態だから頭がぼんやりしているのだ。怒ってはいけない。

と神は思ったこともあったが、よく考えてみれば最初はこうではなかった。

 徐々に徐々に、ぼんやりと。そして気がつけばこの有様。

 さすがに何か変だ。きっと原因があるはずだ。

と、神は朝になり、連中が現実の世界へ戻った後、一人で考え込んだ。


 そして思った。


 委ねられすぎた。

 

 仕事も人間関係も何であろうと神に相談すれば大抵解決。

少なくとも良い方向に向かうのだから、もう深く考える必要はない。

それが最適解。悩む時間は無駄。

そういった思いが積み重なり、今のように自分で考えることをやめてしまったのだ。


 そう結論付けた神は彼らのためを思い、身を隠すことにした。

こうすることで元に戻る、と。


 しかし、いくら祈っても神は現れず、不安と悲しみに浸り

そして怒りに狂った連中は社に火を放った。

 神はもう二度とその町の住民に姿を現すことはなかった。







 と、この話とは無関係なのだが

ある時、ある携帯電話会社の携帯電話が一時的に使えなくなった。

 電話はもちろん、メール、アプリ、ネットすべて駄目。

調べ物だのなんだのしたい人々は困った。

 大勢で支店に押しかけては店員に詰め寄り怒りをぶちまけ、そして増々ヒートアップ。

最終的に店に火を放ったのであった。

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