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湖の白鳥  作者: 大石
3/9

公園へ

「あれ…リュウジ?」

芭蕉はその貧乏ゆすりをしている眼鏡をかけた人物が誰だか分かった。


「ん?おお!大志じゃん!」

「おいおい!外じゃ本名で呼ばないでくれよって言ったじゃんかよ!」




──────────────────────────────



「本名は…ちょっと…出したくないですね」


その少年の名前は大志という。

大手声優事務所であるインディスに所属した際に芸名を決めるということになった。


「なら芸名をつけよう。なんか希望はあるの?」

インディスの事務所内でマネージャーや社長と打ち合わせをしていた。


「いや、特には…」

その少年は右も左も分からないまま声優になったため、芸名など全く考えていない。

「逆になんかいい名前ありますかね?」

少年はテーブルに置いてあるオレンジジュースが入ったコップを取り、喉を鳴らして飲む。事務所の人間から何を飲みたいか聞かれた際、ウーロン茶とコーヒー、抹茶ラテの三択から選んだ。


「大志くん趣味は?」

少年がオレンジジュース飲んでいる最中にマネージャーが聞いてくる。

「んはっ!?趣味ですか!?」

少年は慌ててコップをテーブルに戻そうとする。

「そうなんかハマってるものとかある?」

マネージャーは淡々と聞いてくる。


「趣味……風景画ですかねえ。といってもしゅ───」

「なら芭蕉だ」

社長がいきなり口を開いた。少年の説明に被り気味なくらい即答だった。

「決定だな」

マネージャーも特に驚く様子はない様子だった──────────────────────────


「俺今さ、偽名でやってるから本名言わないで欲しいんだよね!」

芭蕉は小声だが、必死に訴えかけた。

「偽名って言わないだろ」

竜二は特に気にする様子もなく、へらへらしながら芭蕉の表現にツッコミを入れる。


「誰?知り合い?」

遅れてレジに来た隆一は、事態が飲み込めず目を丸くしていた。

「あ、昔からの知り合い。アニメーターやってんの。コイツ」

芭蕉の幼なじみである松来竜二は、隆一とほぼ同じタイミングで「どうも」と言って頭を下げた。


芭蕉は、この一瞬で二人の気は合うだろうかと考えた。

隆一はネガティブで口は悪い時もあるが、あまり怒らない。

しかし竜二は短気な面があるため、人に紹介したくなる人間ではないと芭蕉は思っている。


「ここじゃあれだから、公園でも行こうか」

芭蕉が支払いをしている最中に、隆一が竜二を誘っている。


芭蕉は次の日も収録があったため、早いうちに帰りたかった。

ダルいと思いながら、トレイの上に五千円札1枚を雑に投げ捨てた。

紙幣何枚かと、大量の小銭が返ってきた。

財布に小銭を雪崩のように突っ込んでいると、隆一が「よし、行こうか」と言った。

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