表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/98

その91

「あの時、もしアメリカが天皇制の廃止を強行していたら、きっと、今日のような日米関係は築けなかったでしょうね。

日本国民が付いてこなかった・・・。

いや、最悪は、再び戦争となっていたかもしれない。」

春田部長は静かに言葉を続ける。


「それと同じで、民族には、その共通意識としてのバックボーンが必要なんです。

精神的な背景と言いますか・・・。

民族の色と言いますか・・・。」

「い、色?」


「民族としての誇りと言えるのかもしれません。

それが宗教である場合が多いんです。

いや、信仰と言った方が正しいかもしれない。」

「・・・・・・。」


「日本には、いろんな宗教がある。しかも、制限はされていません。

仏教にもいろんな宗派がある。浄土宗、浄土真宗、日蓮宗・・・と。

キリスト教もある。おまけに、神道がある。

つまりは、宗教は雑多なんですよね。

そのすべてが認められている。

互いが互いを排除しない。

日本人は、それを受け入れるだけの寛容さがある。」

「そ、そうですねぇ・・・。」


「だから、日本では、宗教が民族のバックボーンにはなりえない。

日本人をひとつに纏めてきたもの。

それが、天皇制であり、皇室だったんです。」

「・・・・・・。」


「そのことに配慮したマッカーサーが、本国の上層部を説得して、今の天皇制を残した。

そう言われていますが、私はマッカーサーの判断は非常に正しかったと思っています。

だからこそ、日本はあれだけの焦土から僅か10数年で今日まで復興できた。

そう思うんです。」

「な、なるほど・・・。」

そう言われると、私にも頷けるところが多々あった。



「その日本民族の力の凄さを、この国は求めているんです。

だから、排他的な宗教とは離別の道を選んだ。

そして、何とか日本を真似しようとしている。」

春田部長は、ここで煙草を踏み消して、またその吸殻をポケットに入れる。


「知っていますか? この国が、敗戦後の日本を助けようとしていたことを・・・。」

改めて、私に向かってそう言ってくる。


「えっ! インドが日本を助けようと?」

私には、意外としか思えないことだった。



(つづく)






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ