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その49

私は、自分の性格を「優柔不断」だとは思っていなかった。


それまでの人生で、進学に伴う選択も何度かあった。

中学までは普通の公立校だった。

で、高校に行くとき、どこの高校を受験するかを考えなければならなくなった。

それでも、私は何ひとつ迷わなかった。

「よし、ここにしよう」と自分で決めた。

そして、親に通告しただけだった。


大学もそうだった。

家がそんなに裕福ではないことも分かっていたし、地元京都にはそれぞれに個性のある有名大学がずらりと並んでいた。

そうした環境にいながら、敢えて他府県の大学を選択するつもりは毛頭なかった。


で、これまた「○○大学の工学部」と簡単に決めた。

受験に失敗したらどうしようとは考えていなかった。


大学に入ってから、ふと「外国を見てみたい」と思い立ち、どうしてかインドを旅することにした。

仏教の原点に触れてみたい気持もあったが、それは後から取って付けた理由のような気がする。

「インドに行こう」と決めてからは、素早かった。

1ヶ月後には、もう実家を離れていた。


さすがに、このインド行きだけは、両親が反対をした。

「なんでインドなのか?」

「どうしてアメリカやヨーロッパにしないのか?」

「そんなところに行って、なんの役に立つ?」

「言葉も通じないんだろ?」

「危険なところじゃないの?」

「病気になったらどうするの?」

そうしたいくつもの理由が並べ立てられた。


それでも、私の決心は変らなかった。


不安がないと言えば嘘になっただろう。

それでも、それを打ち消すだけの何かが私を突き動かした。

今考えると、そうとしか考えられない。


そして、そのインドを旅していて、出会った日本企業が、現在勤めている会社だった。

インドの地方都市で見かけた建設機械のメーカーだった。



そんな私だったのに、家内へのアプローチだけは、何とも不甲斐ないものだった。


自分でも歯がゆかった。

それまでの人生で、こんなに前に出られない場面に出会ったことはなかった。

「失敗したらどうしよう」。

そうした不安をまともに考えたのもそれが初めてだった。



(つづく)





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