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その28

「・・・・・・。」

私は黙って聞くしかなかった。

田村部長に断られれば、また新たに誰かにお願いをしなければ・・・。

そう思った。


ところがだ、田村部長が続けた言葉に私は腰を抜かさんばかりに驚いた。

「実は、支店長に報告したところ、是非、自分がしたいと・・・。」

「ええっ!」

「どうだろう?」

「ど、どうだと言われても・・・。」

私は言葉が出ない。


「文句はあるまい?」

田村部長は、椅子に踏ん反り返るようにして言ってくる。


「う~ん・・・。」

私は、訳が分からなかった。


私は、支店長の顔は見たことがあるから知ってはいた。

各種式典での挨拶や、営業部での会議の冒頭で檄を飛ばしてくる。

それでも、その支店長が新たに転入してきた一介の営業部員である私を知っているとはとても思えなかった。

もちろん、直接話したこともない。

そんなヒラ社員のために、取締役でもある支店長が「その仲人は俺がやる」と言う理由が皆目分からなかった。


「君は、支店長と知り合いなのか?」

田村部長が窺うように訊いて来る。

当然の質問だろうと思う。


「い、いえ、とんでもない。」

私は、事実を言う。

そう思われるだけで心外である。


「そ、そうか・・・。まあ、良い。

で、明日、午前10時に支店長室に来るようにとのことだ。

もちろん、俺も直接上長として同席するが、そこで、詳しい話を聞きたいということだ。」

「は、はあ~・・・。」


「分かったのか?」

「あ、はい・・・。」

「じゃあ、そういうことで・・・。」

「・・・・・・。」

私は、それで営業部長室を出た。


田村部長も驚いたようだったが、私はそれ以上に驚いていた。

席に戻って、家内が勤める大学の研究室に電話を掛けたのは言うまでも無い。


「あら、そうなの? それは良かったじゃない?」

家内は、私の話に素直に喜んだ。



(つづく)




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