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その22

私が「いつもの場所」であるギャラリーについたのは、午後6時15分だった。

家内はある絵の前に立っていた。


「喫茶コーナーに行きましょう。」

私の姿を認めた家内がそう言った。

そして、一番奥の席に移る。

これまた、いつもの席である。


コーヒーを注文してから、家内が口を開いた。

「先生、何て仰ったの?」


「い、いや・・・、ただ、来週の日曜日に何か予定が入っているかって・・・。」

「それで?」

「特には・・・って言ったら、付き合って欲しいと。

で、午前10時に、その喫茶杏店に来てほしいって。

ただ、それだけ・・・。」

「・・・・・・。」


「ああ、それから、詳細は、留美さんから聞いてほしいって・・・。」

「・・・・・・。」

私は、在りのままを言った。

そうでなければ、そこから先に何があるのか分からなかったからだ。

まさか、先生とふたりしてお茶を楽しむだけだなんてことはないだろうと思う。



「実は・・・。」

家内がそう言い掛けたとき、コーヒーが運ばれてくる。

それで、家内もそれに続く言葉を飲み込んだ。


家内が砂糖とミルクをそれぞれのカップに入れ、そしてゆっくりとかき混ぜる。

私の好みを完全に覚えていた。


「はい、どうぞ・・・。」

家内がコーヒーカップを私の前に置いてくれる。

「ありがとう。」

私も、それを一口だけ飲んだ。

そうでもしなければ、家内も話してくれないように思えたからだ。


「実は・・・、その日の午後、先生、私の家に来られることになっているの。」

「えっ! な、何をしに?」

私が思わず問い返す。

もちろん、世間話をしに行くとは思えない。


「私に、“縁談”を持ってきてくださることになっているの。」

「え、縁談!?」

「もちろん、あなたとのよ。」

「・・・・・・。」


「本当ならば、こういうお話は午前中が良いのだそうですけれど、私の両親の都合で、午後にしていただいたんです。」

家内も、コーヒーカップに口をつける。



(つづく)



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