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その15

お互いに4月からの新生活が始まってほぼ1ヶ月が経った。

そう、いわゆるゴールデンウイークに入ったある日だった。


週に1度の返信で、珍しく家内からデートの提案があった。

「5月5日のこどもの日に、踊りの会があるので、一緒に観に行かないか」と。

家内は趣味のひとつとして日舞を習っていた。

その関係の会らしかった。


私は内心困惑した。

日舞が分からないのだ。

それでも、「分かりました」と返事を出していた。

そう、私は、その当時でも毎日手紙を書いていた。



で、その当日。

私は、スーツで出かけた。

家内とのデートは、いつもこの服装だった。


ところが、約束の場所に現れた家内は着物姿だった。

だからでもないのだが、傍に来て、家内から声を掛けられるまではまったく気が付かなかった。

まさか、着物を着てくるとは想像もしていなかったからだ。

それまでは、比較的大人しい感じのワンピースなどが殆どだった。


「遅くなりました。」

家内はそう声を掛けてきた。

場所は、四条河原町角にあった高島屋デパートの前である。


「ええっ!」

私は、唖然とした顔で家内を見た。

正直、本人かどうかさえ疑ったのだ。

声を掛けてきたのは家内ではなくって、実は人間違いをしているのではないかと。


だが、じっくりと見ると、確かにその目は家内のものだった。

もう何度も見た筈の円らな目だった。


「ど、どうして?」

私の口からは、そんな言葉しか出なかった。

ようやく家内だと認識はできものの、今度は、だったらどうして今日は着物なのだと。


「私のお師匠さんが踊られる会なので・・・。」

家内は、そう説明をする。



ふたりは並ぶようにして四条大橋を渡る。

会場は、宮川町にある歌舞練場だと言う。

これから、そこに向かうからと家内が言った。


私は、ただ黙って一緒に行くしかなかった。



(つづく)




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