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その14

「でも・・・、結局は捨てられて・・・。」

家内は、それ以後の経過には言及しなかった。

それでも、私の気持の中には、家内が言った“捨てられて”と言う言葉が重く圧し掛かった。


「・・・・・・。」

私も、その話題については何も言えない。

しばらくは、重苦しい沈黙の時間があったように思う。



「ですから、両親には、そのお姉ちゃんのトラウマがあるんだと・・・。

好いた惚れたという一時の感情に流されるから、あんな事になったんだと・・・。」

「一時の感情?」

もちろん、私はそうではないとの自信と確信はあった。


「とりわけ、お母さんは、お姉ちゃんに“相手のご両親にあれだけ反対されているんだから、諦めなさい”と説得をしたらしいんですが・・・。

そのことで、結局はお姉ちゃんが駆け落ちに走ったんじゃないかって・・・。

自分の一言が、そこに追いやったんじゃないかって・・・。

そう、思っているようなんです。」

「・・・・・・。」


「ですから、極端な事を言えば、両親には“恋愛は罪悪”のような感覚さえあるんじゃないかって思います。

お父さんは、私には“いずれ良い人とお見合いを”とまで言っているぐらいなんです。

つまりは、見合い結婚をさせると・・・。」

「・・・・・・。」


「あなたには、ご迷惑なことをお願いしているとは思っています。

で、ですが・・・。」

「わ、分かった、分かったよ!」

私は、そう断言をする。


かと言って、その時、具体的な妙案が思い浮かんだ訳ではなかった。

ただ、家内がそうしてお姉さんの辛い思い出を話してまで言った事に対して、男として何とか応えなければ・・・との思いだけだった。



結局は、しばらくは様子を見ることとなった。

ひとつには、私の転勤が近づいていたし、もうひとつには家内の大学卒業が間近だったこともある。


家内は、私がいずれは自分と結婚をしてくれると信じたらしく、いつでも辞められる大学の研究室に助手として残ることを選択した。

実家のご両親も、その方がいいだろうと賛成してくれたとのこと。

そして、私は希望が叶って、大阪支店に転勤が内定した。

ここだと、京都の実家から通勤できる。

つまりは、京都に生活の基盤を置けることになる。



(つづく)




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