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その10

父親が自分の部屋に入る音がした。

ドアがバタンと締まった。


それを聞いてから、母親が口を開いた。


「お父さんも私も、あんたが誰かとお付合いをしているんだなってことは薄々知ってたの。」

「・・・・・・。」

「帰ってきても、今までみたいに家でのんびりする事もなくなったしね。

殆ど毎日出掛けていて・・・。」

「・・・・・・。」


「で、実は、お父さんから訊いて欲しいって頼んだの。

そうしたら、お父さんったら、“決めたら、連れてくるだろうから”って・・・。

それだけ、お父さんはあんたを信頼してたのよ。」

「・・・・・・。」


「それなのに・・・、あんた、突然に仲人の話なんかするから・・・。」

「・・・・・・。」

私は、正直、グーの音も出なかった。


「そりゃあね、あんたも30歳を超えたんだし・・・。

いつ結婚しても可笑しくは無い。

でもね、それはあんただけの問題じゃないってこと・・・。

その点を良く考えて・・・。」

「わ、分かった・・・。

じゃあ、近々、家に連れてくるよ。」

私は、もう、そうせざるを得ないだろうと思った。



その翌日から、両親は自分たちからその件に触れてくることはなかった。

あくまでも、私の動きを待つ姿勢を貫くつもりだったようだ。

で、私は家内に打ち明けた。


「両親がそう言っているし、一度、家に来てほしいんだけど・・・。」

「・・・・・・。」

だが、家内はなかなか「うん」とは言ってくれなかった。


「毎日お手紙貰ってたでしょう?」

「う、うん・・・。」

「実は、お母さんから、“この人とはどういう関係なの?”って訊かれてたの。」

「そ、それで?」


「文通しているお友達って・・・。」

「・・・・・・。」

「でも、お母さん、“そんな訳無いでしょう?”って・・・。」

「・・・・・・。」


「親って、見てないようで、ちゃんと見てるんだって思ったの。」

三条川端にある静かな喫茶店でのことだった。



(つづく)




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