表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/74

第六話 はっきり言って産廃レベルの不良品

 響から差し出された数十枚のカードの束。

 その大半がDランクカードだったがCランクカードやEランクカードも少数だが混じっていた。その中から直感的にしっくりと来ると感じたカードを機械的に抽出していく。召喚し、命令し、言葉にしづらい感触を探るのだ。

 考えるな、感じろと真顔で言われ、あやふやなアドバイスに最初は呆れていたものの。何枚もモンスターを召喚し続けていくうちに、なんとなく感じるものがあった。確かに使っていて他のカードよりも妙に手に馴染むカードがある。その逆もまた然りだ。

 特に気になったカードは、二度三度と召喚、そして使いこなし、感触を確かめる

 そうして数十枚の束から十枚ほどのカードを選び出した。

 正直、性能的にはハズレのカードも混じっていたが、それがしっくり来たのだから仕方がない。

 守善が選んだカードを見た響も興味深げだ。


「私の手持ち女の子カードはほとんど全部か。念の為確認するけど下心はないよね?」

「俺がカードに求めるのは性能と従順さだけです」

「うん、まあ、そうだろうね」


 守善の守銭奴っぷりを散々見せつけられた響は乾いた笑みを浮かべてそう頷いた。女の子カードの顔面偏差値は非常に高いが、守善がその類の誘惑に惑わされるとは思えない。逆に金運をアップさせるモンスターがいれば是が非でも食いついたかもしれないが、いまのところそうしたモンスターは公式には確認されていない。


「となると先天属性が女の子カードなのかな。後天属性は絞り込めないが……」


 選びだした十枚のカードには女の子カードを除いて特に統一性はなく、後天属性の絞り込みは難しい。


「特にしっくり来たと思える一枚はあるかい?」

「……強いて言うならこのカードですかね」

「木の葉天狗、それも女の子カードか。しかも反逆系スキル持ち。ますます分からなくなったな」


 さらに判断に迷っている様子の響。

 木の葉天狗。天狗系モンスターの最下級であるEランクモンスターだ。カードには鴉のような翼を広げ、巫女と山伏の折衷のような服装をした黒髪の美少女の立ち姿が描かれている。

 境鳥、白狼天狗とも呼ばれ、歳を経た狼が天狗になったものとされる。人界に紛れ込んで人間として仕事に励み、他の天狗からその賃金を吸い上げられるという言わばブラック勤務に励む天狗社会の社畜だ。

 他のカードを見てもバーサーカー(Dランク・人型・♂)、ホムンクルス(Cランク・人型・両性)、獅子(Dランク・獣型・♂)などまるで共通点は見当たらない。


「まあ、ひとまずはよしとしよう。また別のカードに触れてみれば見えてくるかもしれないしね。この中から何枚か貸し出そうと思うが、何か希望はあるかい?」

「安いやつで」


 と、守善は即決した。


「本気で言っているのかな」

「大真面目ですよ」


 響は今日何度目か知れない深いため息を付くが、大真面目な顔で答える。


「道具を惜しむことがないように、いざというときに()()()()使()()()()()()安いカードがいい。使いやすい高級品より、数が多く使いつぶしやすい消耗品を最初のうちは使いたい」


 単純な守銭奴的価値観ではなく、ある種の合理性に基づいた要望に今度は響が唸る。確かにカードを惜しんで生命を失ったのでは本末転倒だ。メンターとして同行する響がいれば問題ないはずだが、万が一の可能性は捨てきれない。ともあれソレが希望なら響に敢えて反対するほどの理屈はない。


「……了解した。その線でカードを選ぶなら――――この三枚かな」


 ちなみにレンタル料は月額五万。ロストした場合はギルドへの販売価格の倍額での弁償となっている。なおこれはかなり守善に有利な契約だ。


「木の葉天狗、ホムンクルス、バーサーカーですか」

「ああ、どのカードも癖が強い。冒険者ギルドに売っても二束三文で買い叩かれる、率直に言えば不良品だ」

「失礼。現物を拝見」


 さっき試した時に確認済みだが、改めてカードのステータスを見直す。


【種族】木の葉天狗

【戦闘力】70

【先天技能】

 ・天狗風:旋風を起こし、味方に付ける。自身の飛行速度が向上する。

 ・初等状態異常魔法:簡単な状態異常魔法を使用可能。


【後天技能】

 ・閉じられた心:マスターに反抗心を抱いている。命令された行動に対するマイナス補正、自由行動に対するプラス補正。

 ・飛翔:飛行系モンスターの中でも特に空を飛ぶことに優れている証。飛行する時にプラス補正。

 ・風読み:風を読み取り、遠方の状況を知覚できる。


 総評。


「索敵役として優秀ですね。スキルもいいのが揃ってる。閉じられた心以外は」

「それが唯一にして最大の欠点だ。反逆系スキルを得たカードはほとんど使い物にならないと言っていい」



【種族】ホムンクルス

【戦闘力】200→100※通常初期戦闘力は200だがマイナススキル『零落せし存在』により戦闘力が100減少

【先天技能】

 ・人造生命:自然ならざる手段で生み出された命。美貌、未分化の生命、虚弱体質、絶対服従を内包する。

  →美貌:その姿は作られたかのように美しく整っている。美形が多いカードの中でも特に容姿に優れている。

   虚弱体質:生命力、状態異常耐性低下。

   未分化の生命:このカードはまだ雌雄が決定していない。マスターとの関係性によって性別が固定されることがある。

   絶対服従:魂の誓約であり呪い。どのような命令であっても実行する。命令に対する極めて強いプラス補正。

 ・無垢:この世に生まれ落ちたばかりの純真な生命。技能習得の効率向上、精神異常耐性低下。

 ・アーキタイプ:詳細不明。


【後天技能】

 ・零落せし存在:本来の存在より零落している。戦闘力を常時100マイナス、スキルの欠落やランクダウン。

 ・短剣術:短剣の扱いに特化した武術スキル。武術スキルと効果重複。特定行動時、行動に大きなプラス補正。


 総評。


「……実質Dランクカード最弱クラス相当の戦闘力しか持たないCランク。はっきり言いますが産廃レベルの不良品では? これならまともなDランクカードの方がよほど使える」

「敏捷はそこそこだが、さして強いわけじゃない。加えて虚弱体質の影響でかなり脆い。絶対服従で指示には忠実だが自発意思が極めて薄い。言いたくはないが、ホムンクルスという種族が根本的に不遇なんだ」

「忠実さと顔以外に何の取り柄もないでしょう。これは」



【種族】バーサーカー

【戦闘力】180

【先天技能】

 ・武術

 ・狂化:戦闘を終了するまで暴走状態となり、徐々に生命力が減っていく代わりに全ステータスが三倍となる

 ・物理強化:物理的な攻撃の威力を強化する。


【後天技能】

 ・恵体豪打:恵まれた肉体から繰り出される豪快な打撃。同族の中でも肉体的に優れている証。

 ・強振 (フルスイング):武器攻撃の威力向上、精密操作性低下

 ・選球眼:遠距離攻撃を見切る眼力。防御技能にプラス補正。


※特記事項

 カードには野球のバッ卜にも見える丸太並に太い棍棒を構えた二足歩行の熊の着ぐるみモドキが描かれている。そのビジュアルは世界的に有名なディ○ニーの看板キャラクターに類似性有り。


 総評。


「能力は極めて優秀ですね。スキルもシナジーが利いている。鈍足だが一撃の威力はDランクでも最強クラスだ。ええ、()()()()()()()()()。ところでこの見かけと後天技能はどこからつっこめば?」

「……能力以外が最大の問題だ。冒険者ギルドに買取拒否をされたのは初めての経験だったよ」

「ロストを検討するレベルですね。こいつを持っているだけで著作権違反と訴訟されちゃたまらない」


 全てのカードを見終えてなるほど、と守善は内心で深々と頷いた。

 三枚いずれも響が不良品と言い切るだけのことはある、一癖も二癖もあるカード達だ。


「どうだい? 考え直すなら今のうちだよ」

「まさか」


 問題があるから安いのだ。自分で要求しておいていざ実物を見て怖気づく可愛げは守善にはない。


「どれも素晴らしいカードです。失っても惜しむことだけはないところが特に」

「忠告しておくが、どれも使いやすくはない。使いつぶしやすくもない。それだけは肝に銘じておくように」


 その忠告を聞いた守善はただ知ったことではないと思った。


(従わないなら従うようにしつけるだけだ)


 胸の内で酷薄にそう呟く。なんとなくだがその内心を見切った響もそれ以上は敢えて何も言わず、改めて三枚のカードを守善に手渡した。なおそれ以外のカードは所有権を破棄し、初期化して響へ返却済みだ。


(さて、どいつから呼んだものか)


 Fランク迷宮で召喚できるモンスターカードは二枚のみ。ちなみに迷宮のランクが上がるにつれて召喚可能な数も二枚ずつ増えていく。

 三枚全ては召還できない。まずどのカードから召喚するか、守善は少しだけ考え込んだ。

【Tips】カードのランクと初期戦闘力

 カードのランクは、大きく分けて六段階に分けられている。しかしこれは、カード自体に記載されているモノではなく、人間側が勝手に初期戦闘力と出現する階層で大雑把に分類したもの。

 そのため、スキルを鑑みればワンランク上でもおかしくないカードや、そのランクにしては弱いと評価されるカードも存在する。


 A・1000以上

 B・500以上999以下

 C・200以上499以下

 D・100以上199以下

 E・50以上99以下

 F・49以下


※上記は原作者である百均氏より許可を頂き、転載しております。


 2022/01/14 ホムンクルスのスキルを一部修正。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
主人公に向けてこの外道! 守銭奴! と思ったらブクマ・ポイント評価お願いします!

Twitter
ツイッターやってます。構ってください(直球)



小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ