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第十六話 打ち上げ

 

 さて、打ち上げである。

 『不死者の窟』攻略後、早速学内新人王戦にに向けて準備を進めるため、解散しようとした守善。だがさすがに今日ばかりは打ち上げに付き合えと全員から引き止められ、しぶしぶと参加していた。

 守善、芹華、ヒデオ。三人は競争相手であり、ライバルだが本質的な意味で敵ではない。

 初めてのDランク迷宮攻略を、それも全員で力を合わせた難関突破をみんなで祝っても罰は当たらないだろう。

 そう言われれば守善としても参加を固辞するほど空気が読めないわけではない。それに同じ敗北の苦さを味わい、切磋琢磨し、力を合わせて障害を乗り越えたチームメンバーに対し、口にはしないが友情を抱いてもいた。


「…………」


 とはいえ明るく賑やかに騒ぐ先輩や同級生たちと調子を合わせ、和気藹々と混ざれるほどコミュニケーション能力が高いわけでもなかった。

 一人黙ったままひたすらに食事を口に運んでいる。その内心は早速大会に向けて思索に耽っていた。


(レギオンの売却分込みで約2000万円分の資金プラス貯金分。Cランク下位なら十分手が届く。さて、何を買うか……。

 それにドロップした影映しのダガーを入手出来たのはラッキーだったな。少しでもレビィは強化しておきたい)


 カードを己が手足(ファミリー)と認め、他者を信じようと心を開きつつあるが、人間そう簡単に性格というのは変わらないものだ。

 が、もちろんそんな守善を周囲が放っておくわけもない。


「守善さん? 笑顔を浮かべて談笑しろなどと出来ないことを言うつもりはありませんが、せめてこちらに混ざりませんか?」

「それはどういう意味だ? ん?」


 たしなめている風でナチュラルに煽っている芹華の台詞に守善の額に青筋が浮かぶ。とはいえ本気の怒りというわけではない。

 互いに煽り煽られ、時に地雷を踏みぬいてはそれ以上の爆風で強制消火するやり取りは最早三人の間のお約束。要するにひねくれているが一種のコミュニケーションなのだ。


「一人で辛気臭い顔をしている殿方に声をかけるのも淑女の努めかと思いまして」

「余計なお世話だ、ほっとけ」

「お生憎様、放っておけません。これは私達のDランク迷宮攻略祝いでもあり、お姉さまと私達のチーム拠点獲得のお祝いでもあるのです。あなたこそ少しは場に合わせることを覚えたらいかがです?」


 そう、彼らがいま打ち上げを開いている場所は響がプロ試験の一部合格と本格的なチームアップを期して用意したチーム用の拠点だった。

 大学からそれなりの距離にある、ほどほどの大きさの一軒家だ。流石に都心からはだいぶ外れた立地だが、それでも都内だけあってお高い。


「流石お姉さまですわ。学生冒険者の身でこのような拠点を用意するなど中々できることではありません」

「確かにな。交通の便もいいし、車用のガレージもある。防犯性も高い。いい拠点だ」


 いつものように響を称賛する芹華だが、今回ばかりは守善も手放しに賛同した。それだけのいい条件を備えた物件だった。

 外見は何の変哲もない屋敷だが中身は冒険者向けにかなり手が入れられている。

 考えられる限り最も厳重な防犯サービスを提供する警備会社との契約に始まり、防犯用の各種魔道具を設置。

 各メンバー専用のロッカー(収納スキル有する純正魔道具。見た目以上に収納可能。登録者にのみ解錠可能)が用意され、高額なカードや重い攻略用装備を気軽に預ける事ができる。

 快適性では娯楽用のアイテムやラグジュアリーな生活用品が一通り揃い、チームで泊まり込んでも快適に過ごせるだろう。

 高額なカードやアイテムを日常的に扱う冒険者だからこその防犯と居住性に気を使った拠点だった。

 個人が用意した拠点としてはかなり上モノだ。

 これ以上防犯性を高めるとなると鉄筋鉄骨のビルを買って法律が許す範囲で要塞化するしかない。そこまでいくと本格的に冒険者チームとしてギルドに正式登録し、法人化した方が色々とスムーズに進む。

 ちなみにこのチーム用拠点だが、購入資金はほぼ響の持ち出しだ。それだけに彼女の入れ込みようが伺えた。


「あとは車と運転手がいれば完璧ですわね。あなた、できませんの?」

「運転免許資格取得に向けて勉強中だ、もう少し待て。その代わりチーム共用の車を購入する時は俺の意見を優先してもらうぞ」


 冒険者チームとして自由に使える(クルマ)はあるに越したことはない。交通の便が悪い場所にある迷宮もそれなりにあるからだ。

 魔法の絨毯やエアバイクなど移動に便利な魔道具が多数普及しつつある世の中だが、インフラ面や法制度も含めて一番利便性が高いのは結局昔からある自動車なのだ。


「大学から近いのも嬉しいですわ。フフ、私一度お友達の家で楽しく夜ふかしというイベントを体験してみたかったのです。お姉さまと一緒ならお父様やお母様も否とは言わないでしょうし」

「ンなもんはオマケだ。そのうち嫌でもチームメンバーで泊まり込むだろうか今のうちに慣れておくんだな」


 楽しげに昔からの夢を語る芹華だが、守銭奴はそのささやかな願望を取り合わずひたすら実利的な側面に注目している。その言動に無粋な輩めと頬を膨らませつつ、これはこれで”らしい”と考えるあたり芹華も守善のキャラクターを理解しつつあった。


「プロ資格さえ取れば卒業してからも大学のCランク迷宮に挑める立地だ。競争相手は冒険者部だけ。Cランク迷宮を寡占できるのは大きいぞ」

「まったくもう、つくづく無粋な殿方ですこと。もう少し遊び心があってもバチは当たりませんわ」

「見ての通りの貧乏性だ。遊び心に理解が欲しければ他所を当たれ」


 大学にあるCランクダンジョンは冒険者部及びその上位チームが大学から管理を委託され、ほぼ専有している状態だ。だが厳密に言えばこのCランクダンジョンに潜れるのは冒険者部の関係者だけではない。

 大学が定める制度上、Cランク迷宮に潜れるプロ資格を持ち、大学の在校生あるいは卒業生ならば誰でも挑戦可能ということになっている。ただこれまでその資格を満たした者が冒険者部関係者にしかいなかっただけで。

 利権・リスクの綱引きや学生へ与える機会の公平性という建前、将来への布石などが絡み合った複雑怪奇な学内政治がもたらした結果である。

 ともあれこの制度は守善達のチームにとって都合がよく、一面では冒険者部にとっては都合が悪い。


「その分冒険者部からのヘイトも溜まるけどね。まあ、必要経費と考えようか」

「お姉さま!」

「先輩」

「やぁ、二人とも失礼するよ」

「お姉さま! どうぞ芹華の隣にお座り下さいませ!」

「ああ、ありがとう。芹華」


 と、ここで響とカイシュウ、おまけにヒデオが会話に合流した。

 せっかく一つの迷宮を独占的に利用している状況が乱されようとしている。この状況を利権と考える冒険者部にとってこのチームの存在は愉快ではあるまいと響が解説する。


「一応部員である俺の前で堂々と言うなよ。聞かなかったフリくらいはしてやるけどな」


 明け透けに事情を語る響にカイシュウが呆れたように口を出した。


「いいじゃないか。君、この間現状の冒険者部は張り合いがないと愚痴っていただろう。競争相手の出現は上手く使えば君にとって追い風になるかもだ」

「げっ、お前後輩がいる前で余計なこと言うなよ」

「さて、なんのことやら。どうも突発的に難聴になったようでして」


 クスクスと笑う響にあっさり心情をバラされ、焦るカイシュウ。なおヒデオは如才なく聞き流し、さっくりと『なかった』ことにした。


「どうしました、突然こちらに来て」

「なに、冒険者部(オレたち)にも関係がありそうな話をしていたからな。混ぜろ」

「俺は先輩達に付いてきた」

「二人が楽しそうに話していたからつい、ね。それに私としても苦労して手に入れた拠点だ。少しばかり自慢したいのさ」


 自慢したいと言いつつその顔に自慢げな色はない。この程度、大したことではないと言わんばかりの平静な表情だった。

 この拠点を用意するために少なくとも云千万、下手をすると億単位で資金が飛んでいったはずだが涼しい顔だ。優雅に泳ぐ白鳥は水面下で後ろ足をバタつかせているというが、響もまた見えない場所で苦労をしているはず。

 その苦労を伺わせない完璧なチームリーダーの姿に、守善はほんの一瞬気遣いの視線を向ける。


(相変わらず手回しがいい。外面も完璧だ。()()()()()


 完璧な人間などいるはずがないのだ。ならば響もまた無理をしているはずで……その弱みを吐き出せる相手はいるのか。少なくとも守善の前では頼りがいの有る先輩としての顔を一切崩していない。弱みの欠片すら見せない。

 カイシュウとは気安い仲のようだが、響はカイシュウに対しても余裕のある、言い換えれば肩肘を張った態度を崩していない。なにより結局は別のチームのメンバーだ、それも非友好的な関係の。


(……いまはただの心配性か。どの道頼られた時に答えられるだけのウデがなきゃ意味がない)


 その背を追う先達として、チームリーダーとして守善は響を尊敬している。だからと言って頼りっぱなしでもいいとは思っていないし、性分にも合わない。

 やることは変わらない。これからも上を目指す。ただ上を目指す理由が一つ増えた。それだけを確認して守善は思考に使っていた意識を会話に戻した。


「――戯れに聞くのですが、俺達の技量(ウデ)は冒険者部だとどのあたりです? 油断や慢心をするほど”余裕”はありませんがふと気になりました」

「あら、面白そうな話題ですわね。私も気になりますわ。まあ、どの立ち位置でも関係ないと言えば関係ないのですが」


 守善が少し意識を逸している間に話題は変わり、いまはヒデオ達が自分達の立ち位置について先輩組へ問いかけている。まさに打ち上げの気楽な場だから聞ける戯れのような問いかけだ。

 人間はとかく格付けが好きな生き物だ。意味はなくても集団における自分の立ち位置や順位は気になるし、知ることで精神安定を図る一面がある。


「……確かに油断や怠け心とは無縁そうだな」

「火花が鳴る音が聞こえてくるね。うん、やはり君達を引き合わせて正解だった」


 反面自分の立ち位置を知り、そこに満足してしまえば成長は止まる。だがヒデオや守善らに関しては無用な心配だ。互いを意識し、お前らには負けないと火花を散らしている。確かにどんな立ち位置にいようが、彼らが緩むことはないだろう。少なくとも学内冒険者新人王戦が終わるまでは。


「正直に言えば俺も気になりますね。三ツ星の先輩方にはまだ及ばないことは理解していますが……」


 そこに守善も乗る。もちろん響達から立ち位置について聞いたところで上に登りつめる意志に変わりはないが。

 地味に難しい質問を投げられたカイシュウは困ったように頭を掻きながら響を横目で見る。


「あー……どうよ、白峰。お前の意見は」

「私に振らないでくれ。冒険者部の基準で聞かれているんだ。君のほうが適任だろう?」

「クソッ、相変わらずこういう時だけ要領がいい……」


 パスを投げれば逆に投げかえされ、カイシュウは仕方なく真面目に考え込んだ。しばしの沈黙を挟んだ後ゆっくりと語り始める。


「……部の基準でも(ランク)の基準でもマジでピンキリだから一概には言えんが――つーか、二年の俺がこんな偉そうなことを言いたくないんだが……冒険者部で言えば既に三年の上位陣。三ツ星の下位くらいの腕はあるだろ。お前らならいますぐモンコロに放り込んでも三ツ星までなら悪くない勝負ができると思うぞ」

「ほう……!」

「それは本当ですの、カイシュウ先輩!?」


 思った以上の高評価に声が上擦るヒデオと芹華。特に超メジャー級の知名度を誇るモンコロにも出場しても見劣りしないという評価は華やかで夢のある話に聞こえたようだ。


「嘘は言わねえよ。そもそもあのクソダンジョンをほぼカード六枚(ソロ)の戦力で攻略できた時点で三ツ星級の腕前は証明済みだ。時間が空いた時に三ツ星への昇格試験受けてみな。多分、拍子抜けするぜ」

「まだ時期尚早と思っていたのですが……そこまで仰るのなら一度挑戦してみますわ」

「『不死者の窟』攻略の恩恵だな。いや、アレを恩恵とは言いたくないが……あそこで一気にレベルアップした実感はある」


 無邪気に喜ぶ二人を他所に守善は訝しげな顔だ。


「……失礼ですが、それは冒険者部の評価が低すぎませんか? 仮にもプロが率いるチームで三年も揉まれた部員が()()()()とは思えませんが」

「……? どういうことだ、守善?」

「なに言ってますの、あなた?」


 守善の冒険者歴は三ヶ月程度。生き急ぐように冒険者としてキャリアを積んでいる自覚はあるが、それでも客観的に見て十倍以上のキャリアを持つ相手に及ぶとまでは考えていない。


「あー……、まー……。お前の言うことも一理あるんだが……この場合はなんて説明すればいいのかね」

「ならこっちの質問には私が答えようか」


 言葉に困っている様子のカイシュウに響が苦笑する。

 冒険者部にも事情があり、そして守善側の認識にもズレがある。特に冒険者部の事情についてはカイシュウからは話しづらいだろうと察した響が質問を受け取った。


「まず冒険者部についてはなにもおかしいことはない。むしろ三ツ星や準三ツ星級の部員が片手の指に余る数いるというのは大したものだ。部員の育成が成功している証だね」


 もっと言えば本来なら在学中にプロ資格を得る部員がいてもおかしくないが、存在しない。ある事情が部員達の成長のボトルネックになっている。それがカイシュウが言い淀んだ冒険者部の”事情”だが……いまは関係がないため響は説明を省略した。


「ですが――」


 反論しようとした守善を手で抑え、響が言葉を続けた。まずはズレた認識を是正しなければ会話が成り立たないと判断して。


()()()()()()()()()。客観的に見て三ヶ月で三ツ星級の腕前を身に着けたのは驚くべきことなんだ。言っただろう、君は金の卵だって」


 ある意味守善は謙虚でもあり、無知でもあった。とはいえ無理もないことだ。普段はほぼソロ攻略で他の冒険者との交流が薄い。かつ自分の力量を客観的に測るというのはプロであっても難しい。

 つまり守善は自身の才能と力量について過小評価していた。


「三ヶ月……!? てっきりもっとキャリアがあるものだと思っていたぞ」

「待って下さい。つまりあなたが冒険者になったのは大学に入学してからということですか!?」


 口々に驚きを示すヒデオと芹華。

 ヒデオは攻略中に見た守善の堂に行った指示と深い知識から自身と同等以上のキャリアを持つと認識していたし、芹華も模擬戦で肌に感じた手強さから漠然と最低でも一年は続けているだろう考えていた。

 ちなみに二人のキャリアはヒデオが約三年、芹華で一年ほどだ。踏んだ場数と潜った死線ならばヒデオが、リンクの才能と上昇志向ならば守善が突出している。芹華は二人の中間くらいの位置に当たるが、同時に天性の勝負勘(ワイルドセンス)の持ち主。冒険者の才能とは別に、勝負師として強いタイプだ。

 全員が方向性こそ違えど長じればプロ冒険者資格にも十分届きうる才能を持つ。


「言っとくがお前ら全員才能ある方だからな? 隣の芝生を見て青いと思ってる暇があったら真面目にトレーニングしてろ。よほど下手な鍛え方をしなければまず伸びる」

「私もカイシュウに同意見だ。君達は私なんかよりよほど才能がある。余計なことは気にせず、ただまっすぐに進むといい」


 キャリアの差から見た思わぬ才能格差に焦るヒデオと芹華をなだめるように言葉を紡ぐ先輩達。

 だが守善は一瞬だけ響の表情に違和感を覚える。慰めや落ち着かせるための方便というには今の台詞にこもった感情はだいぶ苦味の強いような……。


「うむ……。正直、驚いた。大いに驚いた。だがそもそも勝負にキャリアは関係ないしな。強いやつが勝つというだけだ。よし――負けんぞ、守善!」

「一人で納得して私を締め出すのは止めていただけますか!? お二人を華麗に打ち負かして優勝するのは私ですわ!!」

「こっちを無視して勝手に盛り上がるなアホども。こちとら頭の中で状況と認識を整理するのに忙しいんだ」


 素直に驚きを認めつつも、自分を納得させたヒデオが改めて宣戦布告した。するとハブにされた芹華が烈火の怒りを見せ、噛み付く。そこに守善がやかましいと二人を一蹴する。

 怒鳴り、怒鳴られ、煽り、煽られるいつもの三人がそこにいた。

 しばしやいのやいのと盛り上がっていた三人だが、ふと気になる疑問を見つけた守善が先輩達に問いかける。


「ちなみに先輩達の腕前はいかほどで? 俺達より大分上というのは分かっていますが」

「……おい、これも俺が答えなきゃダメか? 白峰、頼んだ」

「うーん、自分で答えるのは自慢みたいで嫌だな。メインカードのランクと枚数じゃダメかい?」


 つまり客観的に評しても自慢のように聞こえてしまう腕前ということだ。そしてその評価も間違いではない。響とカイシュウは三ツ星全体で見てもかなり上澄み寄りだった。

 特にカイシュウは二年生だが、冒険者部のトップに位置するほどの凄腕だ。在学中のプロ資格合格も夢ではない逸材である。響もカイシュウよりは劣るが、冒険者部の上位陣にも負けない腕前だ。


「お、それでいこうぜ。俺の主力はBランクのベルセルク、部からの貸与品だ。あとはCランクのエルフとウィッチ、Dランクのゴブリンシーフをよく使う。他にも手持ちはいるけどな」

「私はCランクのヴァルキリーと付喪神がメインかな。ちなみにCランクはあと二枚ある。Dランクはシルキーのオルマを筆頭に四枚ほど主力を揃えてある。みんな自慢のカードだ」


 ちなみに守善達のエースはCランク。それも一枚、多くて二枚程度。才能云々以前の圧倒的な戦力差が先輩組との間に隔たっていた。

 その衝撃は先ほどまで互いを見比べて一喜一憂していた三人の顔が一瞬でスンッ……、という表情になったほどだ。


「分かってはいましたが……」

「残酷なほどのカード格差だな」

「才能の多寡で騒ぐのが馬鹿らしく思えてきた」


 そして響やカイシュウをしてまだプロ資格には手が届いていないのだ。一気に現実を突きつけられた三人は対抗心を収め、互いの顔を見合わせると。


「「「道は遠いな……」」」


 フゥ、とどこか脱力した様子でため息を吐いたのだった。

 第二章前半部の攻略リザルト

 ※金額は端数切捨て。

 ※諸々概算のため細かい数値にはズレが発生。参考情報となる大まかな金額としてご理解ください。


 ■入手カード

 ・黄泉醜女

 ・バーゲスト

 ・ゴースト


 ■ドロップアイテム

 ・影映しのダガー:Dランク相当のアイテム。市場価格で約150万円。守善が50万円で買取。


 ■ドロップカード収入

 ・6000万円(6250万円):レギオン売却分。うち250万円は響の取り分

 ・180万円:インプ(女)6体売却分

 ・112万円:E、Fランク売却分

 ・30万円:Dランク売却分

 ・252万円:オークション競売金額分

       バーゲスト:210万円

       ゴースト:30万円

       黄泉醜女:12万円

  ※購入にあたり上記金額が各人の財布から支出。ややこしいので各自で脳内補完してください。


 ■魔石収入

  ・約30万円分


 総計:6602万円

 各人への分配金:2200万円

 ※厳密にはインプ売却分の配分比率が異なるがクソややこしいので三等分。

 ※『不死者の窟』対策として事前準備などで散財している者も(金額は守善が顕著)。

  とはいえトータルでは黒字である。


 ★踏破報酬

 ・約270万円:3万円×30階×3倍(ギルド発行クエスト分)

 →先輩組が折半

 ※『不死者の窟』は不人気すぎ、数ヶ月ほど踏破者がいない迷宮だったため、通常の踏破報酬とは

  別途報酬が出るクエストの攻略対象となっていた。今回はカイシュウ、響がクエストを受注。



 守銭奴の総評:

 攻略難易度、かかる労力と時間の割に金銭収入は微妙と言わざるを得ない。

 ※一人あたりの分け前が約200万前後を想定。レギオンのドロップはめったに無い幸運であるため除外。また長期間攻略されておらず、モンスターの密度が異常に高い状態。討伐数、ドロップ率は初回より大きく低下することが予想される。

 ただしより難易度が低いDランクダンジョンを多数攻略する方針ならば安全かつ効率的に多額の金銭収入が期待できる。プロ資格条件の一つである百種のDランク迷宮攻略中に相性のいいダンジョンのリストアップが今後の課題か。

 また、金銭に換算できない大きなメリットとして新規Dランクカードの入手、リンクや連携等冒険者としての技量向上、メンバー間の信頼関係醸成が上げられる。

 トータルでは極めて多くの成果が得られた迷宮攻略だった――こんなクソダンジョン、二度はゴメンだがな!!




【後書き】

これにて第二章前半部は一段落となります。

互いを意識し、対立し、協力して達成した難関迷宮の攻略は如何だったでしょうか?

当初はもっと簡単に済ませるつもりだったのですが、ライバル達の個性を引き出し、互いに意識させるために分量が違法建築並に増量してしまいました。

ぶっちゃけストーリー構成的には反省点も多かったのですが、その分”ライバル”を強調させることには成功したと思ってます。


読者のみなさんは率直に、どうだったでしょう?

ライバルにして友人である主人公ズトリオはどう映りましたか?

迷宮攻略はワクワクしましたか?

後半部の新人王戦への期待は高まったでしょうか?


いつも感想の中で気づきや率直なご指摘を頂き、色々と執筆についてプラスの影響を頂いています。

ご意見・ご感想・あとポイントなど、くださいm(_ _)m



なお後半部は現在執筆中です。次の投稿をお待ちください。

5月のどっかで投稿できたらいいなぁ(願望込み。自分を追い込むために宣言)




追記

第二章後半部について構想するうちに、冒険者部の部員かつ守善に対し強い敵意と対抗心を持つという条件に当てはまるキャラを出したくなりました。


なので第一章でフェードアウトした籠付君(賠償金をむしられ、狛犬を奪われた冒険者部一年生。カマセ犬)が過去改変によって再登板する可能性があります。しない可能性もあります。


原作で言う南山&小野枠的なポジションに立たせる予定です。

もしご意見などありましたら感想またはTwitterへお願いします。




2022/03/29 収入についていろいろと修正(Dランクカード売却分プラス、Eランク売却分を多く見積もっていたため修正等)

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